神経芽腫は白血病、脳腫瘍、リンパ腫にならんで死亡率が高い小児がんである。予後不良群に対しては化学療法、手術、放射線治療などのさまざまな治療法を組み合わせた集学的治療が施行されるが、約半数しか奏功しない上、低年齢時に治療を行うため晩期合併症を患う可能性が高い。以上のことから、難治性小児がんである神経芽腫の有効性が高く副作用の少ない治療法を開発することが待ち望まれている。悪性度の高い神経芽腫細胞ではプロモーター領域に存在するCpGアイランドのメチル化状態が乱れていることが報告されてる。そこで本研究では、神経芽腫の悪性化に関与するDNAメチル化酵素を同定し、その役割を解明することで、新規治療法の開発に繋げることを目的とした。 今年度の研究で以下の成果を得た。 (1) DNMT3BのsiRNAによるノックダウンやnanaomycin AによるDNMT3Bの阻害が神経芽腫細胞のグローバルな脱メチル化を誘導することが明らかとなった。 (2) DNMT3Bのノックダウン細胞 (IMR-32) のRNA-seqによるトランスクリプトーム解析により、DNMT3Bの阻害はp53経路やアポトーシス関連遺伝子の発現を誘導することが明らかとなった。 昨年度の研究では、DNMT3BのsiRNAによるノックダウンやnanaomycin Aによる阻害が神経芽腫細胞株に対してアポトーシスによる細胞死を誘導することが明らかとなった。以上より、DNMT3Bの阻害は神経芽腫に対して抗腫瘍効果を発揮することが示唆された。現在は神経芽腫モデルマウスの腫瘍に対するDNMT3Bの阻害効果を検証している段階である。
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