小児固形癌において患者数の多い神経芽腫においてT細胞抑制分子発現の臨床学的意義を検討した.PD-L1はすでに免疫チェックポイント阻害剤として開発され,広く臨床的にも使用されている.小児神経芽腫においても臨床試験が行われたが,有効な結果は得られていない.神経芽腫では成人腫瘍に比して腫瘍細胞内の遺伝子変異量が少なく,腫瘍抗原が低いため,腫瘍浸潤リンパ球数が少ないことが免疫治療の効果が限定的となる要因として考えられている.そこで今回着目した標的分子はCD200である.CD200はレセプターに結合することでT細胞による免疫応答を抑制する.CD200はさまざまな腫瘍細胞上に出現していることが知られており,CD200高発現腫瘍では腫瘍浸潤リンパ球が少ないことが報告されている.これはCD200がT細胞の腫瘍浸潤を阻害することに関与していると考えられる.すなわち,腫瘍浸潤リンパ球が少ない神経芽腫ではCD200を治療ターゲットにすることで高い治療効果が得られる可能性がある. 神経芽腫におけるCD200発現についての報告は非常に少なく,まだ十分に検討されているとは言い難い.そこで今回神経芽腫生検標本,切除標本においてCD200の発現を評価し,臨床学的意義を検討した.化学療法施行前の生検検体あるいは一期的切除検体は47例あり,47例中CD200高発現群は25例,低発現群は22例であった.CD200高発現群において有意に生存率,無再発生存率が低かった(P=0.02,0.001).Stage4の症例では80%がCD200高発現であった.また化学療法施行後の切除検体における検討で,化学療法後にCD200高発現である症例では低発現群に比して有意に生存率が低かった(P=0.007).神経芽腫におけるCD200発現は予後に関連し,その要因として化学療法抵抗性に関わっている可能性が考えられた.
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