研究実績の概要 |
悪性腫瘍の根源とされる癌幹細胞は、自己複製能、多分化能、造腫瘍能を有する少数の癌細胞集団で、治療抵抗性を示し、再発や転移の原因となる。本課題は、肝細胞癌患者の血液から循環血液細胞(Circulating Tumor cell: CTC)を生きたまま採取し、これを培養することで個々の患者に特異的な癌幹細胞を同定・解析を試みる研究である。研究計画が倫理委員会で承認され、肝細胞癌患者から20mlの採血を得て、血中の癌細胞を免疫染色で同定する試みを行った。初年度は新型コロナ感染症のために患者との接触も長期に渡り制限され、血液サンプルが得られたのは4例のみであった。4例中2例が再発症例であり、1例は門脈浸潤を伴うStage III症例,もう1例はStage II症例であった。免疫染色の条件検討にHuh7やPLCなどのHCC細胞株を用いて、EpCAM, CK8, CK18, CK8/18カクテル抗体で染色し、検出率の高いCK8/18カクテル抗体を使用することとした。採血の後、速やかにOncoquick細胞分離液を用いて赤血球、白血球、血小板を可及的に除去し、特殊ポリマーをコーティングしたスライド上で培養することによりスライドグラス上から血球成分が遊離して癌細胞が残り、翌日にCK8/18抗体を用いたワンステップ法により免疫染色すると血球よりもサイズが大きく、いびつな形態の腫大した核を有する癌細胞らしき細胞が観察できた。血中の癌細胞の捕獲と染色は4例ともに成功した。培養は7-10日間行い、血球細胞が脱落してゆく中、4例中3例でサイズの大きな癌細胞様の球体形成を認めた。4例目については、7日目にシャーレ内に残っている細胞を集めてRNAを抽出したが、サンプル量が少なくRNA抽出段階で核酸の分解が起こり解析はできなかった。
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