研究課題/領域番号 |
21K16420
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
永田 真知子 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (70899088)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 免疫チェックポイント阻害剤 / レジデントメモリーT細胞 / 濾胞ヘルパーT細胞 / CAR-T細胞 |
研究実績の概要 |
近年、腫瘍近傍に出現する異所性リンパ構造であるTertiary lymphoid structure (TLS)が腫瘍免疫微小環境の形成に重要な役割を果たし、ICIの治療効果とも密接に関与することが明らかとなってきた。本研究では、TLSの形成において重要な役割を果たす濾胞性ヘルパーT (Tfh) 細胞とレジデントメモリー様腫瘍浸潤T(RMlike-T)細胞に着目し、次世代型CAR-T療法のプロトタイプの作成を目的とする。そのために、大腸癌マウスモデルを用いて①Tfh細胞とRM-like T細胞の誘導機構を解明し、②Tfh細胞による養子免疫療法の効果とメカニズムを検討する。さらに、ヒト大腸癌の治療に応用するた め、③ヒト大腸癌切除標本におけるRM-like T細胞とTLS構造およびTfh細胞との相関性を明らかにする。大腸癌免疫微小環境に注目し、この制御に基づく養子免疫療法を提案し、治療成績の向上を目指す。 まず、大腸癌細胞株MC38(MC38-OVA)の皮下接種モデルに対し、Tfh細胞を投与し、抗腫瘍効果と腫瘍内の変化を検討する。Tfh like 細胞を準備する。Tfh としての機能評価をin vitro で行う。 Tfh の機能評価として、①RM-T 細胞(CD8+CD103+)の誘導能、②エフェクター機能の評価、 ③Tfh 細胞の細胞傷害性、④腫瘍内B 細胞の抗原提示能の評価、および⑤腫瘍内B 細胞の細胞傷害性を評価する。 また、大腸癌手術症例のTIME分析深層学習アルゴリズムを用いた病理診断を行う。TLS、Germinal center (GC)、腫瘍内CD8+T細胞、Tfh細胞の評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は、マウスモデル作成中である。OT-IIマウスの準備が整い、培養系の検討をおこなっている。また、免疫方法として、NKT細胞活性化ワクチンを用いたTfhの誘導を試みている。移植実験系を確立して、抗腫瘍効果の検討を詳細に行う予定である。さらに、誘導及び機能解析については、現在、すでに遂行中であり、腫瘍側の要素も含め検討したいと考えている。 大腸癌の手術症例の解析については、現在、免疫染色の条件設定を終了し、染色、解析を開始した状態である。AIイメージングサイトメトリーの導入は問題なく遂行され、アノテーションがほぼ終了した状態である。胚中心や腫瘍近傍の3次リンパ構造に関しては、染色、識別ともに順調である。定量化の自動化の観点が検討事項があるが、概ね順調に進んでいる。 コロナ感染拡大による、注文試薬の遅延が多発しているが、現在の時点では、概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
Tfh細胞の培養系への導入の加速化、機能改易の加速化のために、さらにOT-II培養系の確立を目指している。 対象に一定の条件下で、Tfhの誘導系が確立できれば、現在は生体内から採取してそのデータを蓄積しているが、より、簡素化されてはいるが、本質的なTfhを大量に作成することにより、より、有利な条件で実験を進めることができると考えられる。培養系の安定が今後の研究の推進策であると考えている。 AI いメージサイトメトリーの精度はどんどん上昇しており、質の良い評価が可能であると考える。ただ、新規のプログラムを作成することは非常に手間を要するために、通常の免疫染色評価用のアプリを併用することも考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染の蔓延に伴う制限で、進捗状況が遅れた。健常者における培養も制限が加わり、研究再開が遅延したため、計画通りの使用とならなかった。また、試薬を注文した際にも、海外からの取り寄せに制限がかかり、かなりの時間を要するために、実験が遅延する結果となった。このため、今年度は、昨年度分の計画をそのまま遂行し、出来るだけ成果につなげたいと考える。
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