研究課題/領域番号 |
21K16424
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武居 晋 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30883425)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / シングルセル発現解析 / 癌微小環境 / 膵癌関連線維芽細胞 / 腫瘍免疫 / 新規治療標的 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、膵癌自然発癌モデル由来膵癌細胞を同所移植することで抗腫瘍免疫を含めた微小環境再現モデルを作成し、腫瘍形成初期過程から腫瘍増大に伴う腫瘍微小環境内の経時的変化を腫瘍組織のscRNAseq解析によって明らかにし、膵癌細胞の免疫逃避機構に関わる新たな細胞集団を同定し、それらを制御する新規治療法を確立することである。 今年度は膵癌自然発癌マウス(KPC)由来膵癌細胞をマウスに移植するモデル作成し、CAFの免疫微小環境への影響を探索した。まず、KPC由来膵癌細胞を同じくKPCマウスから樹立したCAFと共にマウス皮下に移植し、CAFと共移植した腫瘍と、癌細胞単独の腫瘍における免疫細胞の比較を行った。すると、CAFを共移植した群ではやはり腫瘍形成が促進されていた。組織の免疫染色とFACSを用いた解析から、CAFを共移植した群では有意に腫瘍内のCD8+Tcell(TIL)の浸潤が少ないことが明らかになり、T細胞の腫瘍内への浸潤の障壁になるCAFのクラスターの存在が示唆された。 また、膵癌手術検体から作成したオルガノイドを形態的に分類したところ、CAFが分泌するとされる癌微小環境因子への依存性が、分化型膵癌ほど、その表現型の維持と腫瘍増殖において、微小環境因子へ強く依存していることを見出して、論文発表した。これらのことから、癌微小環境において癌細胞のphenotypeごとにCAFの免疫抑制性機能も異なっているという仮説を考え、オルガノイドを用いて分類した癌細胞のphenotypeごとに、移植して形成した腫瘍内のTcellの分布を解析したが、元々の癌細胞の分子サブタイプ分類と腫瘍内のTcellの分布に明らかな相関はなかった。 これらの結果から、やはり膵癌細胞以外の膵癌関連線維芽細胞や免疫細胞に由来する因子が微小環境形成に大きく関与していることを示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はKPCマウス由来膵癌細胞をCAFと共培養することで、腫瘍内Tcellの浸潤が減少することを明らかにし、CAFがTcellの腫瘍内浸潤に関わっていることが確認できた。また、癌細胞のphenotypeによってCAFへの依存性が異なるということを発見したため、癌細胞のphenotypeごとに、マウスに同所移植して免疫微小環境を解析した。結果、癌細胞のphenotypeと腫瘍内のTcellの分布に明らかな相関は認めなかったが、癌細胞以外のCAFや免疫細胞に由来する因子が微小環境形成に与える影響の重要性を示した。このことは今後のシングルセル解析のために非常に重要なヒントとなるため、概ね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌自然発癌モデル由来膵癌細胞を同所移植することで作成した腫瘍を解析することで本年度の結果から、やはり膵癌細胞以外の膵癌関連線維芽細胞や免疫細胞に由来する因子が微小環境形成に大きく関与していることを示唆され、今後は当初の予定通り、経時的なscRNA-seqにより、CAFの免疫抑制性機能の解明を行う予定である。免疫抑制性機能を持つCAFクラスターが同定できれば、特定のCAFを治療標的とした治療法の開発を目指す。
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