膵癌に対する近年の化学療法の進歩により,これまでにない治療効果を経験する一方で,既存治療に抵抗を示す症例も少なからず存在する.応 募者らは最近,CD200発現が膵癌治療抵抗性に深く関わっていることを新たに見出した.本研究では膵癌を対象とし(1)治療抵抗性獲得膵癌に特 徴的な遺伝子変異の同定,(2)特定された候補遺伝子とCD200発現との関連性の包括的解明,(3) 宿主免疫機構から見た治療抵抗性メカニズムの 検討,(4) 候補遺伝子ノックダウンによる抗腫瘍効果の検証を行う.以上の結果に基づき,症例毎の適性に合った個別化治療の確立とともに治 療抵抗性克服による新たな膵癌治療戦略を構築することを目標とし研究を開始した. 初年度に切除可能膵癌・切除可能境界膵癌に対する術前化学放射線療法中に切除不能となった症例,さらには手術加療後,早期再発をきたした 症例,また切除不能膵癌 に対する全身化学療法中に腫瘍増大や遠隔転移を認めた治療抵抗性症例において,治療開始前に内視鏡的に採取された膵癌組織検体あるいは切除標本を用いて次 世代シーケンサーによる網羅的な遺伝子解析を行い,治療抵抗性膵癌に特徴的な遺伝子変異を検出し同定する予定であったが,同定しうることができなかった.そのため2022年度は,治療抵抗性を示した症例と,治療奏功した症例を再分類し,再度,遺伝子解析を行い,治療抵抗性と関連のある遺伝子変異の同定を行うべく解析を行った.
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