研究実績の概要 |
本年度より本格的に研究開始となった。 当院で大腸ポリポーシスに対してサーベイランスを行っている32例を対象とした。対象症例に対し、患者血液を用いて次世代シークエンサーによるポリポーシス原因遺伝子(APC, AXIN2, GREM1, MUTYH, MSH3, NTHL1,POLE, POLD1, RNF43)の検索を行った。必要に応じてMLPA法やサンガーシークエンスを行った。APC遺伝子の病的バリアントが同定された症例は14例、MUTYH遺伝子の病的バリアントが同定された症例が1例であった。残りの17例に関しては血液を用いた遺伝学的検査では明らかな原因遺伝子は同定できなかった。 上記検索でバリアントが同定されなかった症例のうち大腸ポリープの組織採取が可能であった症例において体細胞モザイクの検索を行った。大腸内視鏡施行時に採取した大腸生検検体からQIAamp DNA mini kitを用いてDNAを抽出し、APC遺伝子のバリアントを検索した。異なる2か所以上で同様のバリアントが同定された場合をAPC体細胞モザイクとした。今年度中に来院し検体採取に同意が得られた症例は1例であったが、本症例では異なる2か所の大腸生検からAPC c.896_897delCTのバリアントが同定され、体細胞モザイクと判断した。 遺伝学的検査で明らかな原因遺伝子が同定されなかった症例のうち、過去に手術や内視鏡的切除の際に保存しているFFPE検体がある場合にはFFPEよりDNAを抽出し解析を行ったが、経過年数が長いほどDNAの回収率が悪く解析困難であった。患者同意のもと、新たな検体採取が望ましいと思われた。
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