研究実績の概要 |
胆道癌切除材料に含まれるBilINや再生異型上皮などの胆管内病変の分布や、これらの遺伝子変異を詳細に解析することは、ヒト胆道発癌・進展機構を知る上で極めて重要である。そして、胆道の発癌素地を考えた場合、膵胆道の発生の共通性と両臓器の可塑性が、診断と治療の両面において胆道癌の新たな視点から見直すヒントとなると考えられる。胆道癌の周辺の肉眼的正常胆管に分布する微小上皮内病変の遺伝子変異プロファイルを取得し、主病変と比較することにより、胆道癌の進展・再発様式を明らかにし、胆道癌において、主病変(浸潤癌)と肉眼的正常胆管に分布する全ての異型上皮内病変(BilIN, IPNB, 再生異型など)との間にクローン類縁性があるかを明らかにすることを目的として、本研究を開始した。3年間の研究期間内に得られる術後再発の情報をもとに、胆道癌術後再発の予測モデルを構築するデータベースを作成、切除断端の病理学的な情報に加えて、断端から病変に至るまでの肉眼的正常胆管にみられる上皮内病変の数と形態、遺伝子異常(KRAS、TP53その他の胆道癌関連遺伝子の変異の蓄積パターン)、術前及び術後治療の有無、腫瘍マーカーを含む血液データとの関連性を数理学的に評価する。 2021年度は、10症例分の肝外胆管癌切除標本について、病理医と共同で胆管内病変の精密なマッピングを行った。症例によっては、同一病変内に分化度の異なる病変の共存が認められ、また主腫瘍周囲にも異型上皮の進展が認められた。これらの病変について、マイクロダイセクション法を用いてサンプリングしゲノムDNAを抽出、独自に設計した胆道癌遺伝子変異同定用のチップを用いて、遺伝子変異情報を取得中である。また同時に解析症例についての予後を調査しファイリングも行っている。
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