申請者らは、癌部のTGF-βシグナルの活性化により誘導され、悪性度や治療抵抗性を引き起こすTransforming Growth Factor-Beta-Induced(TGFBI )蛋白の癌間質部発現が、肺癌Nivolumabに対する治療抵抗性に関連することを報告した。胃癌においても癌間質TGFBI発現がNivolumab治療抵抗性を予測するバイオマーカーとなることを証明した。そこで免疫チェックポイント阻害剤の薬効を抗TGFBI抗体により増強できるのか、また増強できるとしたらそのメカニズムはどのようなものかを明らかにし、革新的胃癌治療への臨床応用の橋渡しを目的とした。 まずはTGFBIの分泌起源について多重免疫染色を施行し、癌関連マクロファージ(CD163陽性細胞)より分泌されていることを証明した。胃癌手術を受けた197例の切除検体におけるTGFBI、E-カドヘリン(EMTマーカー)、またCD163(腫瘍関連マクロファージ)の発現と臨床病理学的因子、予後について、Lauren分類に応じて検討を行った。TGFBI高発現で有意に予後不良であった(p=0.011)。TGFBI高発現で深達度SE以深が占める割合が高く(p=0.0002)、術後再発と相関を認めた(p=0.011)。またTGFBI高発現で有意にCD163高発現であり(p=0.013)、腫瘍内浸潤CD8陽性T細胞は有意に少なかった(p=0.0045)。2017年10月から2018年11月の間に参加5施設で、切除不能進行再発胃癌に対してニボルマブ治療を行った49例のTGFBI発現と治療抵抗性について検討では、癌間質TGFBI低発現では3例(20%)、高発現では30例(88.2%)がPDであった(p<.0001)。現在はモンペリエ大学と共同研究という形で完成した抗TGFBI抗体を使用し、各検討中である。
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