研究課題
Patient-Derived (Orthotopic) Xenograft (PD(O)X)モデルは、患者から採取した腫瘍組織片を免疫不全マウスに移植するモデルで、従来行われている細胞株移植モデルと比較して癌の不均一性や癌微小環境の再現性に優れたモデルとして注目されている。我々は肝内胆管癌の新たな治療標的としてWarburg効果に着目し、肝内胆管癌由来PDXモデルを用いてこれを検証することを計画した。PDXモデルは倫理委員会承認後、患者より同意を得た肝内胆管癌切除標本より一部を移植用として採取し、細断した組織片をヌードマウスの皮下に移植する実験系を用いた。また同所性移植モデルとなるPDOXモデルは、皮下移植でのPDXモデルを確立したのち、皮下生着腫瘍を肝臓内に移植する方法を計画した。昨年度は患者の同意を得ることができた5例の肝内胆管癌症例から移植用組織片を採取し、PDXモデルの作成を試みた。そのうち3例に皮下での腫瘤形成が認められ、3ヶ月飼育後に犠死させ腫瘍の生着を組織学的に観察した。その結果腫瘤内のごく一部に癌細胞の集簇が確認できたものの、大部分が線維芽細胞や炎症細胞に置換されており、純粋な癌細胞の生着はほとんど見られなかった。一方、切除標本や臨床データを用いてWargurg効果の代表的マーカーであるGLUT1とさまざまな細胞増殖制御因子との関連を関連を評価した。その結果、細胞内酸化ストレス制御に関与するタンパクとの関連が認められた。現在このタンパクを標的とした抗腫瘍効果の検証をin vitro/vivo実験にて実施中である。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症(特に2022年夏の流行)により病院、研究室運営に大きく制限が掛けられ、一時手術症例数は減少した。その後は手術症例も回復基調ではあるが、肝内胆管癌手術症例の元来の少なさを考慮すると、未だ十分な症例数が蓄積できていない。肝内胆管癌のうち、胆管浸潤型に対しては切除後速やかに胆管よりホルマリン注入をするため、PDXモデルには使用できない。2021年度・2022年度は胆管浸潤型が多かったのも影響している。
引き続きPDXモデルの症例数を蓄積し、モデルの確立を試みる。また細胞外基質等を用いて生着率の向上を目指したい。一方、Warburg効果との関連を示唆するタンパクXを同定した。そのタンパクXと癌特異的糖代謝や抗腫瘍効果との詳細な関連、メカニズムに関して、引き続き実験を行う。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)
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