研究課題/領域番号 |
21K16448
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕策 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80799437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 癌 |
研究実績の概要 |
本研究は、癌幹細胞(Cancer stem cell: CSC)を標的とした食道癌に対する新規治療法開発を目的とする。CSC は癌組織中に極少数含まれ、転移能、抗癌剤耐性や放射線治療抵抗性を有し、消化器癌の術後再発や遠隔転移に関与しているという仮説が提唱されており 、癌の根治にはその制御が不可欠である。我々は独自の方法で癌細胞株から癌幹細胞様細胞 (Cancer stem-like cells: CSLC)を誘導することに成功し、成果を報告してきた。今回、食道癌においても、独自に樹立したYES1-6にKYSE30と KYSE70を加えた8種類の細胞株からCSLCの誘導を行い、これら8種類について ①「通常培養」と「CSLC誘導培養」を行った際のRNA-seqデータを取得し、培養条件に加えてsphere形成能に基づく群分けを追加した4群間での比較を行い、sphere形成細胞に特異的に高発現する遺伝子リストを得る。 ②公共データベース (TCGA) より取得した食道癌185例の予後とRNA-seqデータを用いて、上記のsphere形成細胞に特異的に高発現する遺伝子リストにおいて、予後とも優位に相関する遺伝子に絞り込む。 ③CSLC特異的高発現かつ予後不良因子となる遺伝子について、統計的に上位5遺伝子についてsiRNAを用いてノックダウン解析を行う。それぞれのノックダウンによるSphere形成能への影響を評価し、主となる標的遺伝子を同定する。 以上の事を計画していた。しかしながら、CSLCの誘導トラブルにより、その後の解析に遅れが生じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究でのCSLC誘導は独自培地を用いた短期培養 (1週間) でのsphere誘導とその後のラミニンコート上での長期培養 (2か月) から成る。今回、長期培養後の細胞生存率に著しい減少が見られ、その後の解析に支障が生じた。肝癌由来細胞株を用いた我々のCSLC研究では長期培養を行わずに短期培養のみでCSLCが誘導できることを確認し、複数の論文で示している。そこで、令和4年度では食道癌由来細胞株においても、肝癌由来細胞株と同様の短期培養にてCSLC誘導を行うこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
改善したCSLC誘導法を用いて得られた細胞がCSLCとしての特性を有しているか確認した後に当初予定していた実験計画を速やかに実行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に培養トラブルにより、実験が遅延したため大幅な次年度繰越額が生じた。令和4年度においては、問題点を改善して実験を進めることができる予定である。培養関係の試薬量を増やして、解析回数を増やしてこれまでの遅延を挽回して当初目的を達成する。
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