肝胆膵手術における2本の血管を1本の血管に吻合する血行再建の至適方法に関して、流体工学による検証を行い、その方法を国際誌にて報告した。その内容は、2本側の血管の隣り合う壁を楔状に切除した上で、1本に形成してから、対となる1本の血管に吻合することで、上流側にかかる圧が軽減されるというものである。上流側の圧が軽減されることで、血栓の形成などによる閉塞の可能性が低減されると考えられる。また分岐形態においては、分岐部にかかる壁面ずり応力が軽減されるということも検証された。同手技は当科においては一般的に行われてきたが、これは経験のみから得たものである。今回、経験で得た知識を科学的に証明することができたことで、外科分野において、広く使用されるようにな理、多くの患者がその有益性を得る可能性がある。 また、下大静脈の走向形態が肝切除中の術中出血に与えることを以前に証明したが、こちらも流体学的な影響は不明であった。今回、下大静脈の走向形態が肝静脈へ与える圧の変化などを流体学的に検証した。下大静脈が右心房に向かって腹側に立ち上がるように合流する形態の場合には、肝静脈の圧が高くなることを流体学的に証明できた。本結果に関しては、現在投稿中である。 以上の2つの研究を行い、外科領域におけるコンピュータ流体学的検証の有用性を明らかにすることができた。コンピュータ流体力学検証は、更なる外科的手技の向上や術中・術後に起こる事象の予測に有用と考えており、新規の研究を予定している。
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