研究課題/領域番号 |
21K16474
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
矢野 修也 川崎医科大学, 医学部, 助教 (50794624)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EMT / PDX / イメージング / 大腸癌分類 |
研究実績の概要 |
令和3年度の実験計画は、①EMT型大腸癌分類を細胞株とPDXで確立すること、②化学療法への反応を検証する、ことである。 ①予備検討として、大腸癌細胞株HCT116とRKOにはすでにEMT可視化プローベを導入していたが、これらはMSI-H癌(低分化型)というやや特殊タイプであった。今回、腺癌型の代表であるSW480にEMT可視化プローベを導入した。HCT116、RKOは低分化型MSI-H型大腸癌、SW480は腺癌型なので、臨床を非常に模している細胞モデルを得ルことが可能になった。PDXは腹水浮遊癌細胞から細胞株の樹立に成功している。上記ともに、樹立は容易であった。 ②EMT可視化プローベ導入SW480を大腸癌化学療法の代表である、5-FU、オキサリプラチン、イリノテカンで治療したところ、5-FUで91.3%、オキサリプラチンで95.6%、イリノテカンで88.1%がEMTを起こすことを確認した。さらにグリベックで同時投与、グリベック先行の逐次投与を行うとEMT状態の細胞は9-19%とEMTは著明に抑制された。 ③これら基礎的実験を踏まえ、TCGAによるpublic databaseで解析を行った。大腸癌597例の解析を行ったところ、申請者らが主張している間葉系でなおかつEMT能力のあるサブタイプが存在し、低分化がんと同等の予後不良であった。また申請者らが検討しているEMTマーカー、間質マーカー共に、高・中分化型、低分化に比べ有意に多かった。 EMT型大腸癌の分類の妥当性、治療反応性、PDX作成と計画通りに行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の実験計画の一番重要なことは、EMT型大腸癌分類を確立することである。 大腸癌細胞株HCT116とRKOに加え、SW480にEMT可視化プローベを導入した。これにより、HCT116、RKOは低分化型MSI-H型大腸癌、SW480は腺癌型なので、臨床を非常に模している細胞モデルを得ルことが可能になった。また、HCT116とRKOは定常状態ではほとんどEMTを起こしていなかったが、SW480は定常状態で30-50%ほど既にEMTを起こしていた。この結果から、大腸癌には、EMTを起こさないタイプ、刺激によりEMTを起こすタイプ、常時EMTを起こしているタイプの3つに分類可能になり、大腸癌のEMT分類モデルを構築出来た。 さらに、大腸癌化学療法をEMT可視化プローベ導入SW480に行うと、EMTは誘導され、グリベックが化学療法誘導性EMTを抑制し、申請者らの仮説通りであった。 また、がん遺伝子パネルで明らかになった間葉系大腸癌の患者に患者申し出療養を使いグリベックの投与を行った。 また、TCGAによるpublic databaseでの解析でも、申請者らが主張している間葉系でなおかつEMT能力のあるサブタイプが存在し、低分化がんと同等の予後不良であった。また申請者らが検討しているEMTマーカー、間質マーカー共に、高・中分化型、低分化に比べ有意に多かった。
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今後の研究の推進方策 |
①EMT型大腸癌へEMT抑制治療;EMT阻害薬のスクリーニングと化学療法の感受性の回復の検証大腸癌には、EMTを起こさないタイプ、刺激によりEMTを起こすタイプ、常時EMTを起こしているタイプの3つに分類可能になったので、グリベック同様に、EMT阻害薬のスクリーニングを行う。 ②バイオインフォマティックスによる化学療法誘導に特化したEMT関連遺伝子発現の解析;クリスパーCas13システム(GeCKO v2)を用い、コントロール、化学療法誘導EMT後、グリベックによるEMT抑制状態のHCT116、RKO、SW480細胞のシングクセル解析による網羅的遺伝子発現の比較を行う。HCT116、RKOは低分化型MSI-H型大腸癌、SW480は腺癌型なので、臨床を非常に模している細胞モデルを得ているので、クリスパーCas13システムによる網羅的解析は非常に重要と考えている。 ③実際のトランスレーショナルリサーチ;がん遺伝子パネルで明らかになった間葉系大腸癌の患者に患者申し出療養を使いグリベックの投与を行った症例についても検証を重ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
時間と労力、トランスフェクション代が掛かると考えていた、EMT可視化プローべのトランスフェクションが遅滞なく行えたため。また、PDXに加え腹水からの癌細胞の樹立も遅滞なく、マウスを大量消費する事なく行えたため。 繰越金は、本年度(2022年度)にCrsperCas13による網羅的遺伝子発現解析を行う予定としている。また、これらの大量のデータを扱うソフトウェアならびにハードウェアも購入予定としている。
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