研究課題
実績1. TCGAおよびCCLEの解析から、EMT型大腸癌はマイクロサテライト安定性かつRAS野生型に多く、マイクロサテライト不安定性に多く含まれていた。16000種の遺伝子発現解析、1600のシグナルパスウェイ解析から、間質増生を伴う大腸癌では、予想通りEMTに関連する遺伝子発現、シグナルパスウェイが亢進していた。実績2. HCT116では5FU、オキサリプラチン(OX)、イリノテカン(IRI)では、EMT転換癌細胞76.9%、51.5%、53.5%に増加させたが、グリベック(IMA)は6.9%、9.6%、9.2%、レゴラフェニブ(REGO)、12.1%、16.7%、17.3%へ減弱させた。RKOでは、5FU、OX、IRIでは、EMT転換癌細胞78.5%、91.6%、65.7%に増加させたが、IMAは6.9%、7.7%、9.2%、REGO、18.3%、4.0%、11.4%へ減弱させた。SW480では、5FU、OX、IRIでは、EMT転換癌細胞91.3%、95.6%、88.1%に増加させたが、IMAは8.6%、6.4%、19.2%、REGO、17.2%、21.0%、8.1%へ減弱させた。免疫組織学的検査にても、HCT116、RKO、SW480では5FU、OX、IRIは、有意にEMT関連タンパクを亢進させたが、IMAは有意に減少させた。実績3. 間質の多い大腸癌をwhole slide imaging (WSI)で定量化し、TCGA597例全てのWSIで分化型、未分化型、粘液型、間質型に再分類した。遺伝子発現解析、シグナルパスウェイを組織型を加味して機械学習によりクラスター解析を行なった。組織型を加味することで初めて大腸癌をシグナルパスウェイで分類出来、シグナルパスウェイから組織型を予想することが可能になった。実績4. 臨床で間質型大腸癌へのIMAとREGO使用を検証した。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度の実験計画の一番重要なことは、EMT阻害剤を検証することである。大腸癌細胞株HCT116とRKOに加え、SW480にEMT可視化プローベを導入した。5FU、オキサリプラチン(OX)、イリノテカン(IRI)などの殺細胞剤は、EMT転換癌細胞を有意に増加させ、IMAやREGOはEMT転換細胞を有意に減少させた。IMAやREGOはEMT阻害剤であることをイメージングにより明らかにした。がん遺伝子パネル検査(CGP)でIMAを使用した実際の患者の検証も行ったところ、間質型でかつEMT発現型であった。実際IMAを使用した後、殺細胞剤と分子標的薬で著効した。さらに、細胞株による基礎的研究を臨床コホートであるTCGAに落とし込むことにより、間質型(EMT型)大腸癌を特徴を明らかにした。間質型(EMT型)大腸癌を、組織型とシグナルパスウェイで分類、定義出来た。すなわち、EMT阻害薬を使うべき候補を見出すことが可能になった。以上から、EMT型大腸癌の抽出、EMTの克服=EMT阻害剤のスクリーニング、治療戦略の構築=臨床コホートによる治療戦略に合致した症例の検討、と本研究課題名に沿った進捗を得られていることより概ね順調に進展していると判断した。
令和5年度の実験計画は、臨床コホートの検証することである。計画1. TCGAによるpublic database大腸癌597例、申請者らのコホート解析。大腸癌をwhole slide imaging (WSI)で定量化を進め、AIによる画像分類や画像検知を用いTCGA597例全てのWSIで分化型、未分化型、粘液型、間質型に定量化に基づいて再分類する。これに基づき申請者らのコホートでもWSIによる定量化を行う。計画2. 16000種の遺伝子発現解析、1600のシグナルパスウェイを深層学習を用いた組織型分類も加味して、さらなるニューラルネットワークに基づいた機械学習によりクラスター解析を行う。組織型を加味することで初めて大腸癌をシグナルパスウェイで分類出来、シグナルパスウェイから組織型の予想を一致させる。これに基づき申請者らのコホートでもNGSによる遺伝子発現量と組織分類の関連性についての検討を行う。計画3. 臨床コホートを用い、EMT阻害薬であるIMAならびにREGOの効果の有無を検証しEMT阻害薬の適応と治療戦略について検討する。
予定した通り研究遂行が可能になったため、抗体代が計上よりも安価で成果を得ることができた。深層学習や機械学習など、GPUを用いたハードの充実、プログラミングの充実により外部委託することなく成果を上げることが可能になったため。前述8の計画に沿って以下を行う。計画1. 申請者らのコホートでwhole slide imaging (WSI)化(1000円/1枚スライド)に使用。計画2. 厳選した症例で、NGSを用いた16000種の遺伝子発現解析に使用。計画3. 臨床コホートを用い、REGOの効果の有無を検証しEMT阻害薬の効果を免疫組織学的検討やNGSを行うために使用。その他、論文校正、掲載料に使用する予定である。
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