研究課題/領域番号 |
21K16475
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
中島 正夫 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (00875487)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵癌 / 術前化学療法 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は、患者の抗腫瘍免疫状態に着目し膵癌に対する集学的治療としての術前化学療法(NAC)適格症例・レジメン選定のため、新たな複合マーカーの探索を目的とする。NAC前、中、後の患者腫瘍免疫状態の変化を解析し、患者アウトカムとの関連を検討する。前年度は血液から分離したPBMCに対してフローサイトメトリー(FCM)による解析を行ったが、明らかな関係は見出せず単一因子の評価は限界があると考えた。 そこで、令和4年度は症例集積を継続するとともに、次世代シークエンサー(NGS)を用いてPBMCの遺伝子発現状況の包括的な解析を行った。対象として、長期無再発(2年以上)症例2例、早期再発(1年以内)症例1例、NAC中に病勢進行(PD)を認めた1例を選択した。また、化学療法レジメンによる差違も検討するため、modified FOLFIRINOX(mFFX)を投与した4例とGemcitabine+Nab-paclitaxel(GnP)を投与した4例を選択した。PBMCの包括的なImmune signatureを評価するため、6つのアルゴリズム(XCELL、TIMER、QUANTISEQ、MCPcounter、EPIC、CIBERSORT+ABS)を用いた。結果、mFFX投与症例では臨床経過に関わらず全症例でNAC後にCD8+T細胞の占める割合は増加していた。長期無再発症例はCD4+T細胞の占める割合がNAC後に増加していた一方で、早期再発、PD症例は低下していた。この傾向はGnP症例では認められなかった。化学療法レジメンに関わらず長期無再発症例でB細胞が減少していた。この結果をNGS解析対象症例に関してFCM解析でも確認したところ確かに同様の結果である事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度における計画は、これまで通り症例集積とアウトカムの情報収集を継続することおよび、NAC前・後のPBMC中の免疫細胞フェノタイプの変化および化学療法による違いについてNGSを用いて解析し、患者アウトカムと比較することであった。結果、現在まで57例の症例を集積しえており、このペースは予定通りであり、解析対象としては十分量を集積し得たと考えている。一方でNGS解析に関してはアルゴリズムを用いた解析方法の習得(プログラミングソフトの使用方法習得を含む)と、実際の解析手技施行に難渋し、解析結果を得るまでに非常に時間を要した(まだ、全ての解析を終了し得ていない)。一部臨床経過と相関する可能性のある所見を同定し得たが、解析の途中であり更に詳細な免疫細胞フェノタイプに関しても検討を行っている。以上の理由により予定した解析は施行したが、時間を要しておりその他の解析を施行し得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
PBMCのNGSによる遺伝子発現解析の結果をアルゴリズムを用いて引き続き解析を継続する。アルゴリズムによる免疫細胞フェノタイプの推測では大まかな変化しか検討し得ないためより詳細な変化を検討するため、NAC前後PBMCのRNA変化(DEG)を解析する。予後と関係性がある遺伝子の絞り込みを行い、集積した57症例を対象としてその同定遺伝子に関連する分子に関してフローサイトメ-ターを用いて妥当性を検討する。また、切除標本における腫瘍微小環境の所見を病理学的(IHC、Phyenocycler)に検討を行い、病理学的化学療法奏効状態、臨床経過やPBMC所見と相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
NGSで得られた結果をフローサイトメトリーで解析する予定であったが、至らなかった。抗体等の物品を購入し同解析を施行する。
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