研究課題/領域番号 |
21K16499
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
川尻 英長 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40515235)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生体内組織工学 / 自家移植 / 同種移植(親子間移植) / 異種移植 / 臨床応用の拡大 / 脱細胞化処理 |
研究実績の概要 |
引き続き他科由来のグラフトを応用する技術開発のために、結合組織代用血管に化学処理・脱細胞化処理を加える実験を行った。 本年度は主に脱細胞処理法についても見直しを行った。まずこれまで行ってきた界面活性剤を灌流する方法を改良することにより、生体内組織工学代用血管の脱細胞化処理短縮を試みたが、還流法で全体で約7時間までの短縮が可能となった。 処理法そのものについても以前用いて還流法から、さらなる手技の簡略化および短縮を目指して別の方法を導入した。グラフトが粗な構造であるため通常の生体血管の脱細胞処理よりも短時間かつ簡便な処理法の適用が可能と考えた。そこでより処理効率を高めるために、これまでの様に少量の処理液を還流する方法ではなく、大量の処理液中に作成したグラフトを浮遊させ強く振盪する方法を導入した。本法では複雑な還流設備が不要であるだけではなく、閉鎖された空間での清潔操作が確保しやすいという利点がある。さらに一度に大量の組織を処理できるため作業効率の向上が可能となる。従来法と比較して本法を用いた処理後の組織の評価ではより短時間で十分な脱細胞化が行えることが組織学的評価およびDNA定量で確認できた。また物理特性計測システムを用いて処理前後の検体を比較したところ、脱細胞後も十分な強度が保持されていることが確認できた。頸動脈への同種パッチ移植試験では短期で良好な結果が得られつつある。今後の産業化を想定するとこの振盪法は、他科由来脱細胞化組織作成の工程の簡便化・迅速化・効率化につながるものと考えさらに研究を継続する予定である。 今後は本処理法の最適化条件を検討し、更なる効率化を目指す。また実際に作成した組織の他科移植動物実験を積極的に行い、グラフトとしての有用性を検討するとともに、合わせて今後はこれまで行ってきた自家移植実験との比較も開始したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のごとく今年度は脱細胞化処理の最適化に集約して研究を行ったため、年度内に予定していた動物移植実験の一部は主に次年度に行うこととなった。 やや移植実験は遅れ気味ではあるが、ほぼ順調に予定の研究は進行しており、徐々に成果報告も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開始した大量の処理液を用いて強く振盪する脱細胞化処理について様々な溶液の濃度・量、振盪処理条件を比較することにより、組織学的検討・DNA定量をもとにさらに最適化・効率化を目指す。さらに処理後の組織の物理特性計測を行うことにより物理的強度を安全に保つことが出来る処理条件を検討する。その後引き続き短期~中期の他科移植実験を継続する。合わせてこれまで行ってきた自家移植実験との比較も開始したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
脱細胞化処理の最適化に集約して研究を行ったため、当初本年度中に予定していた動物動脈への移植実験は一部次年度に行うこととなった。そのため本年度購入予定であった実験動物や実験機材・薬剤の購入が当初の予定より少なくなった。次年度は集中的に動物実験を行い、論文執筆を含め積極的な情報発信を行う予定である。
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