研究課題/領域番号 |
21K16501
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
荒川 衛 自治医科大学, 医学部, 准教授 (30624647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大動脈解離 / ステントグラフト / 血管内治療 / シミュレーション / 模擬回路 |
研究実績の概要 |
令和3年度に、本モデルの原型を作成し、Jouranal of Artificial Organsに原著論文として報告した。実臨床に近い圧と流量での検討が可能で、さらにエンドリークの測定が可能であった。令和4年度の主な実績は、様々な形態のA型大動脈解離モデルの作成および、それに対応したステントグラフトの開発と模擬留置実験を行い36th Annual meeting of European Association of Cardiothoracic Surgeryで発表した。 これまでのA型大動脈解離モデルは患者CTデータを元に内腔を作成したが、外形はそのまま維持し、エントリーの位置と解離の形態を変化させたモデルを作成した。またステントグラフトの形態を変化させ、上行大動脈にエントリーがある場合、弓部大動脈にエントリーがある場合に分けて、ステントグラフトをA型大動脈解離のステントグラフトに必要な解離形態に関しての評価を行った。我々が提示しているステントグラフト他に報告がなく、大動脈解離に特化したステントグラフトとなりうる。また、生体模擬した血流および血圧下で模擬留置実験できるという実験系は少なく、画期的な実験系としての評価を受けた。エントリーの完全閉鎖は至っていないが、水と血液との違いでリークをゼロにすることは難しいため、どれくらいのリークがモデルでは許容であるかを見定める必要があり、モデルとしての治療のゴールを設定し、ステントグラフトの拍動型模擬回路の実験系としての有用性を報告していくことに意義があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度に本研究の主軸となる実験系の開発を行い原著論文として報告した。その後、大動脈モデル側のラインナップとステントグラフト側のラインナップを増やして、エントリー閉鎖効果の検討を行った。ステントグラフトは、すでに開発されているステントグラフトとの差別化として、上行大動脈部分のみカバーされ、弓部から下行大動脈にかけてはカバーされていないステントグラフトを使用し、エントリー閉鎖効果を検討した。一方、弓部にエントリーがある場合は、弓部三分枝を温存してエントリーを閉鎖させる必要があり、上行大動脈にエントリーがある場合と比較し弓部にエントリーがある場合の閉鎖効果は乏しかった。これらに対するステントグラフトの開発が必要であるとの知見が得られた。また解離の形態もこれまでは患者CTをもとに忠実に再現していたが、内腔が重要であるということが考えられ、内腔の分類も必要であることが考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では外形を一定にして内腔を変化させており、今後は外形も変化させる必要があると考えている。大動脈の外形を径と屈曲で分類し複数用意するとともに、内腔をエントリー、解離している範囲で分類し、モデルのラインナップを作ることが必要であると考えている。また、モデル側の問題点としては、圧による形態変化があることである。しかしながらこれは実臨床でも起こりうることであり、解離血管の特に真腔に留置するステントグラフトの素材も検討する必要があると考えられた。特に急性期は内腔も外形も変化しこれに対応するフレキシブルな素材が必要であり、金属のステントグラフトのみではなく、偽腔側への処置が必要であることも示唆された。 また本研究ではA型大動脈解離のステントグラフト治療という目標を掲げているが、B型大動脈解離の大動脈モデルもなくB型大動脈解離での研究を行うことも検討している。既存の治療でのB型大動脈治療を行い、水での実験で起こりうるエンドリークを予想してA型大動脈解離のモデルでの治療のゴールを定めていくことがステントグラフトの拍動型模擬回路の実験系としての有用性を報告していくために必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進んでいるが、モデルを再利用することができたのが次年度使用額が生じた理由である。一方で、より多くのモデルラインナップが必要となったため、より多くのモデルを作成するために使用する。
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