研究実績の概要 |
既存ECMOシステムに体外循環用血液学的パラメータシステム(連続的血液ガス分析装置)を設置した。ECMOシステムから得られる灌流量と体外循環用血液学的パラメーターシステムから得られた測定値を自動記録装置へ各種データを取り込めるようにシステム改良を開始した。また、開心術の人工心肺における自動記録装置からもECMOシステム改良後に得られるデータと同様になるように改良を行った。 当院において成人開心術症例のうち、術後ICDSCスコアによるせん妄評価を受けた患者を対象とした。人工心肺中の酸素需給バランスパラメータと術後せん妄に関して225名を調査した。せん妄(ICDSCスコア≧4)は9名(4%)、せん妄予備群(ICDSCスコア1から3)は163名(72.4%)、非せん妄(ICDSCスコア=0)は53名だった。年齢は3群間で有意差を認めなかったが(p値=0.193)、ICDSCが高いほど体表面積(平均;m2)は小さく(1.51, 1.62, 1.68; p=0.014)、術前ヘマトクリット値(平均値;%)は低かった(34.0, 38.4, 38.9; p=0.016)。一方では、ICDSCスコアが高いほど人工心肺灌流量(中央値;L/min/m2)は高い結果であった(2.86,2.78,2.72; p=0.012)が、人工心肺中の最低ヘマトクリット値(中央値; %)はICDSCスコアが高いほど低い結果であった(21,22, 23; p=0.048)。人工心肺中の酸素供給量(中央値;mL/min/m2)は各群で有意差を認めなかった(49.1,339.9,341.8;p=0.48)。また、ICDSCスコアが高いほど人工心肺中のヘマトクリット値が25%を下回った時間が有意に長かった(58,31.7,18.3;p=0.021)。多変量解析においては年齢(p=0.049)と人工心肺中のヘマトクリット値が25%を下回った時間(p=0.023)がせん妄の予測因子であった。
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