ECMOや開心術で使用される体外循環管理では、不適切灌流が原因と考えられる臓器障害が起こることが知られている。その予防に酸素供給量を連続モニタリングし、酸素受給バランスを考慮した体外循環管理が術後の腎機能障害を抑制することが報告され注目を浴びている。しかし、腎機能障害以外の合併症についての報告は少ない。このような背景のもと、腎機能障害以外の合併症、特に中枢神経障害と体外循環管理中の酸素受給バランスとの関連について評価することで、中枢神経障害を抑制する体外循環管理技術の向上を目指して研究に取り組んできた。体外循環関連パラメータのひとつである体温と中枢神経障害との関連性も確認され、体外循環中の温度管理についても検討をした。本研究課題ではECMOと開心術における体外循環管理の違いも検討予定ではあったが、症例数が少なく、有効なデータ収集が十分に行えておらず、長期と短期の体外循環管理における十分な検討は実施できなかったが、開心術における体外循環管理に関する必要データは得ることができた。 2023年度は収集した検体を用いて中枢神経障害の指標となるバイオマーカの測定を実施した。測定結果と体外循環中の酸素受給バランスに関連するパラメータと術後せん妄や腎機能との関連を調査した。併せて体外循環中の温度管理ついても同時に調査した。バイオマーカ測定時にELISAキットの一部に不具合が確認され、解析および検証に時間を要したが、新規キットによる測定のやり直しによりデータを得ることができ、解析結果に大きな問題は生じなかった。2023年10月には新しく発見した体外循環中の温度管理と術後腎機能障害に関する学会発表を行った。本研究課題に関するまとめを実施し学会発表と英語論文を2024年に発表する。
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