研究実績の概要 |
ビタミンB1を添加した心筋保護液を作成し、まずマウスのランゲンドルフ心を用いて実験を行った。C57BL/6マウスを深麻酔下に開胸、心臓を摘出してランゲンドルフ装置に設置した。上行大動脈よりカルシウム濃度1.8mMのKrebs-Henseleit(KH)液の逆行性灌流を10分間行い、心拍が安定したところで心筋保護液に切り替えた。心筋保護液の組成により二群に分けた。臨床で使用されているミオテクター心筋保護液(Miotector: Na+120.0, K+16.0, Ca2+2.4, Mg2+32.0, Cl-160.4, HCO3-10.0mEq/L)を使用した群(MT群, n=4)と、ミオテクター液に300uMのThiamine Pyrophosphate(Vitamin B1)を添加した群(MTV群, n=4)に分け、単回投与にて心停止を得たのち40分間の虚血を施した。その後カルシウム1.8mM-KH液を用いて60分間再灌流を行ったところで実験を終了、マウス心をランゲンドルフ装置から取り外し、右室心筋と左室心筋に分けて採取し、炎症・アポトーシス関連遺伝子のmRNAの発現をPCR法にて分析した。 結果として、まず両群すべてのランゲンドルフ心において再灌流後に心拍は再開し、60分間の再灌流中、心拍は維持されていた。Quantitative PCR解析では、アポトーシスの前段階で発現するCaspase系、ミトコンドリア障害因子でありプログラム細胞死へ誘導するm-AIF, Bad, Bak, Bax、細胞死抑制因子であるp70S6K, p90RSKは、右室および左室心筋で、MT群、MTV群ともにmRNAの発現に有意差は認めなかった。しかしながらBcl-2の発現に関しては、右室心筋では両群間で有意差を認めなかったが、左室心筋においてはMTV群で有意に低下していた。
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