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2021 年度 実施状況報告書

肺がん治療耐性に対する鉄代謝異常に着目した新規治療法への挑戦

研究課題

研究課題/領域番号 21K16511
研究機関岡山大学

研究代表者

鳥越 英次郎  岡山大学, 医学部, 客員研究員 (20895023)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード肺癌 / 鉄代謝異常 / 薬物耐性
研究実績の概要

本研究は、がん細胞における鉄代謝異常ががんの悪性化に及ぼす影響を明確にし、非小細胞肺がん、特に種々の機序により既存薬物治療に抵抗性を獲得した治療耐性肺がんに対する鉄代謝異常を標的とした新規治療戦略の開発を目的としている。
令和3年度は、まず肺がん細胞における悪性形質に鉄過剰状態が与える影響について検討した。肺がん細胞は正常細胞(気管支上皮細胞)に比し細胞内鉄イオン濃度が高く、また薬剤耐性株(EGFR―TKIオシメルチニブに対する耐性株)は親株よりもさらに高濃度であることを複数のEGFR変異肺がん細胞株(HCC827、HCC4006、HCC1975、PC9)を用いて確認した。さらにこれら肺がん細胞では、鉄剤投与により細胞遊走能は上昇し、EGFR-TKI(オシメルチニブ)に対する感受性の著明な低下を認め、鉄過剰状態が治療抵抗性の獲得の一因となることが判明した。次に、オシメルチニブ耐性株に対する鉄キレート剤(デフェラシロクス)の抗腫瘍効果をin vitroで検討した。オシメルチニブ耐性株は親株と比べ細胞内鉄イオンが高濃度であるが、デフェラシロクス投与により細胞内鉄イオンは完全に除去され、さらに細胞の遊走能は有意に抑制された。一方で、細胞増殖抑制効果は一部細胞株(PC9)を除き限定的であった。またがん幹細胞は特に著明な鉄代謝異常を示すことが報告されていることから、当初、鉄キレート剤ががん幹細胞に対して特に有効な治療であることを期待していたが、我々が樹立した幹細胞性あるいは上皮間葉転換を獲得することにより分子標的薬ならびに殺細胞性抗がん薬に耐性を獲得した細胞株を用いた検討では、その有効性は確認されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

複数のEGFR変異肺がん細胞株を用いて、鉄過剰状態ががん悪性形質(細胞遊走能)を促進すること、分子標的治療薬の治療抵抗性の獲得を誘導することを明らかにした。また鉄キレート剤による細胞遊走抑制効果を確認した。概ね研究は順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

鉄過剰状態が治療抵抗性をもたらす詳細な機序に関する検討を行う。さらにEGFR変異肺がん薬剤耐性株に対して、鉄キレート剤を併用することでオシメルチニブに対する耐性が解除されるか、in vitroおよびin vivoモデルを用いた検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

物品購入において、一部当初の見込みよりも少額で購入出来たものがあったため、余剰が生じた。次年度に繰り越して解析費用および物品購入に充当する予定である。

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公開日: 2022-12-28  

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