研究課題
LY6DはLymphocyte antigen 6(Ly6)ファミリーに属するGPIアンカー型膜タンパクであり、主に血球系細胞に発現していることが知られていたが、近年肺癌を含む様々な癌腫において高発現することが報告されている。我々はマウスモデルを用いた研究により、LY6Dは肺癌における癌幹細胞マーカーである可能性を見出した。さらに、正常のマウス肺にはLY6Dがほとんど発現していない一方で、継代を重ね老化マーカーが上昇した肺オルガノイドにおいてLY6Dが高発現していること、またLY6Dをノックダウンすることでオルガノイドの形成が著しく抑制されることを発見した。このような知見をもとに、原発性肺癌手術検体においてLY6Dの発現を免疫組織学的に評価し、術後再発予後との相関を解析した結果、腫瘍でLY6Dが強く発現している症例は、LY6D発現が弱い症例と比較して有意に術後無再発生存期間が短縮していることを発見した (ハザード比:4.385、P < 0.01)。また公開RNA-seqデータベースの解析から、LY6Dを高発現している症例は低発現症例に比べ好中球関連シグナルの活性化および好中球浸潤が増加していると示唆され、LY6Dが腫瘍微小環境の免疫細胞プロファイルにも影響を与えている可能性を見出した。さらに、LY6Dの生体における機能や役割を詳細に研究するために、LY6Dを発現している細胞がEGFPによって標識され、任意のタイミングでLY6Dをノックアウトすることができる遺伝子改変マウスLy6d-EGFPを作製した。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
JNCI: Journal of the National Cancer Institute
巻: 114 ページ: 97~108
10.1093/jnci/djab128