研究実績の概要 |
ARDSに対するVV-ECMOによる肺保護戦略は人工呼吸器による肺へのダメージを回避し、自己の肺修復を待つ治療であり、積極的に肺の修復を促すわけではない。予後改善のための更なる治療の開発が求められている中で、NO吸入がARDSにおけるVV-ECMOの肺保護戦略に上乗せして肺血流の増加作用や血栓形成抑制作用、好中球の接着抑制作用、代謝産物であるNO2-による細胞保護作用予防により、肺組織の修復・正常化を促進させる可能性があると考え、本研究を計画した。 2023年度は、2022年度から開始したNOガス供給回路を用いた本実験を継続した。ラットの急性肺障害モデルを用いて、1) 通常換気、2) 通常換気+NO吸入(20ppm)、3) VV-ECMO下の肺保護換気、4) VV-ECMO下の肺保護換気+NO吸入(20ppm)の4群でそれぞれ実験を進め、計画通りの実験を終了した。1)群と2)群の比較では治療開始前後の循環動態(MAP, SBP, DBP, HR)に差はなく、血液ガス分析の結果に差はなかった。3)群と4)群の比較では治療開始前の循環動態には差がなかったが、治療開始後は4)群においてMAP, SBP, DBPが高く維持されていた。血液ガス分析の結果に差はなかった。VV-ECMOにNO吸入療法を併用するモデルは問題なく構築可能であり、ECMO環境下でもNO吸入は循環動態を悪化させず、平均血圧はECMO単独群よりも高く維持されていた。 保存した血清検体のサイトカイン測定を行い解析が終了している。保存した肺組織検体の病理切片スライドの作成を行い、終了している。 本研究結果は第41回日本呼吸器外科学会で「ARDSに対する新規治療開発-VV-ECMOに一酸化窒素吸入療法を併用するラットでのプレクリニカルモデル―」の演題名で発表する。
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