研究実績の概要 |
肺扁平上皮癌においては, 94%で染色体3q26-28のコピー数の増加が報告されSOX2およびPIK3CAに影響を与えると報告されているが[Bass AJ, et al. Nat Genet. 2009] [Hammerman PS, et al. Nature 2012] [Kim BR, et al. PLoS Biol. 2016], 現在まで治療標的となるドライバー遺伝子変異は確認されておらず, 実用化された分子標的治療薬はない.肺扁平上皮癌のドライバー遺伝子としてSOX2, PIK3CAが候補として注目され,SOX2陽性かつPIK3CA陰性の群が扁平上皮癌の予後予測に有用であると報告した[Iijima Y, et al. Intern J Oncol. 2015; 46: 505-12].肺と同様に前腸内胚葉より発生する食道癌や喉頭癌においてSOX2が直接または癌抑制因子であるPTENを介して間接的に, PIK3/AKT/mTOR経路を亢進し, 腫瘍の成長や癌細胞の遊走能や浸潤能を制御すると注目されている[Gen Y, et al. Cancer Sci. 2013] [Yang N, et al. Oncol Rep. 2014]. また,近年, SOX2がSOX9の発現を阻害し肺癌の浸潤能の獲得を阻害しているとの報告があった[Lin SH, et al. Cancer Res. 2016].肺扁平上皮癌においてSOX2過剰発現や発現抑制がどのようなシグナル経路を介して特にPI3K/AKT/mTOR経路を調節し発癌に作用するのか, また,PIK3CAやPTEN, SOX9と共にPI3K/AKT/mTOR経路を制御しているのかを解明することを研究課題とした. 当院で手術した扁平上皮癌100例の予後解析を行った。しかしながら、標的蛋白質の免疫染色の条件設定に難渋し、具体的な成果をあげられなかった。
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