研究実績の概要 |
本年度は、本研究申請の目標である多施設共同研究を実施するための準備段階の研究を進める事が中心となっている。人工心肺開始後~人工心肺の血流量が体表面積に見合った目標流量(full flow)到達まで、一般的には人工呼吸器の呼吸は継続している。麻酔器の吸入麻酔気化器から人工肺に酸素と吸入麻酔薬を吹送する場合、呼吸停止までは吸入麻酔薬は人工肺に吹送できない。full flow到達は5分~10分程度のものであるが、この間にどの程度、吸入麻酔薬血中濃度が低下するかと検討しておく事は、本研究申請の目標である本邦における多施設研究を実施する上で、管理上重要な知見をもたらす。以下の報告で、これを検討した結果を発表した。 Tamura T, Mori A, Nishiwaki K. The equilibrated blood sevoflurane concentrations show a rapid decrease after switching from ventilation for the human lung to cardiopulmonary bypass. Nagoya J. Med. Sci. 2022;84:163-168. 人工心肺側に吸入麻酔器気化器を別途設置して人工肺に吸入麻酔薬を吹送していればもちろん問題ないが、麻酔器の気化器を利用していたとしても、確かに一時的に麻酔薬濃度は下がるが、覚醒するほどまで到達しない。さらに、以下で、本邦における吸入麻酔薬による人工心肺中の麻酔鎮静管理についてまとめた総説を発表した。 Tamura T, Mori A, Nishiwaki K. Safe sedation management using volatile anesthetics during cardiopulmonary bypass. J Anesth.2022;36:287-293.
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