研究実績の概要 |
IFNβ-1aによるCD73の発現誘導と、細胞間接合タンパク質への影響を培養細胞を用いて調べた。内皮細胞において、IFNβ-1aは時間および用量に依存してCD73の発現を増加させた。さらに、IFNβ-1aは細胞間透過性を低下させ、その保護効果がCD73の活性と発現の両方によって介在されていることを明らかにした。また、IFNβ-1aはCD73依存的に接合タンパク質の局在と細胞骨格のリモデリングを制御することも判明した。接着関連分子の発現変化については、E-cadherin, ZO-1, Occuldin, Claudin-5の細胞内局在を免疫組織染色法で調べたところ、IFNβ-1a処理によりこれらの接着分子の細胞内局在が変化し、細胞膜に集積することが明らかになった。さらに、バリア機能維持に重要な細胞間接着タンパク質であるE-カドヘリンを含む接合タンパク質の発現をIFNβ-1aが増加させることも確認された。アデノシンやCD73活性阻害薬を用いた解析からは、IFNβ-1aによるバリア機能の保護効果がアデノシン非依存的な経路を通じている可能性が示された。細胞間バリア機能の変化に関しては、細胞間バリア機能をアッセイするシステムを構築し、IFNβ-1aがLPS処理による細胞間バリアの透過性の亢進に拮抗し、細胞間バリアを強化することが明らかになった。この細胞間バリア強化はCD73分子の発現に依存的であり、Ecto-5'-nucleotidase活性阻害薬により部分的に拮抗された。一方、1% O2環境への曝露やHIF-1α水酸化酵素阻害薬を用いた外因的な活性化は、単独で透過性を亢進することが判明した。 結論として、IFNβ-1aはCD73依存的にジャンクションタンパク質の発現と局在を調節することで内皮細胞のバリア機能を向上させた。
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