研究実績の概要 |
本研究では、μオピオイド受容体(MOR)へのユビキチン修飾が、リガンド刺激によって起きるMORの受容体内在化の効率を制御している可能性を見出し、活性化依存的にMORがユビキチン化されることが、活性化した受容体を速やかに細胞内へと内在化する上で重要であることを見出した。また、特にGi/oとアダプター分子であるβアレスチンが協働して活性化するMAPK経路を解析し、MORへのユビキチン化はシグナル強度やシグナル伝達効率には顕著な影響を与えないことを明らかにした。さらに、MORの細胞内領域に存在するリシンのうち、どのリシンへのユビキチンの付加が重要であるかを、ユビキチン欠損変異体を作出して解析した。細胞内領域には8つのリシンがあり、ユビキチン化の標的となっていると想定される。独自にMOR-8KR変異体(ユビキチン化欠損変異体)を作出し、1st, 2nd, 3rd cytoplasmic loop、およびC末端領域のK→R変異をR→Kへと戻した変異体の解析を行なった。受容体の内在化は、1st cytoplasmic loopのリシンが野生型である場合には野生型のMORと同程度の効率で受容体は内在化したが、その他のリシンがアルギニンに置換されていても、受容体の内在化の効率は大きく影響を受けなかった。つまり、MORの1st cytoplasmic loopのリシンへのユビキチンの付加が、受容体の効率的な内在化に重要であるとわかった。これまでの成果をまとめ、海外誌に論文発表している。 最終年度は、MORのユビキチン化に関わるユビキチンリガーゼや、ユビキチン化されたMORの機能を制御する脱ユビキチン化酵素を探索する基盤となる実験として、MORの免疫沈降に着手した。MORは疎水性領域が多く、さまざまな条件を検討したが、実験に難渋し十分な成果を上げることができなかった。
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