研究課題
本研究では、疼痛外来で慢性疼痛を有する患者に対して水素を摂取してもらい、疼痛に対する効果及び副作用・合併症の有無を検証している。我々のグループはこれまでに動物実験により、水素が抗酸化機能を介して慢性疼痛の治療に有効である可能性を報告した。その際、慢性疼痛発症前のみならず、慢性疼痛が生じつつある時期や、慢性疼痛が固定化された後でも水素投与は有効性が認められた。ヒトにおいても水素を用いた多くの臨床研究が行われているが、慢性疼痛への適応は検討されてこなかった。水素は副作用の報告が皆無であることや、医療経済的にも大きく有利なことから、革新的な治療法となる可能性がある。本研究における研究対象者はペインクリニック外来定期通院患者のうち慢性疼痛を有する者(性別は問わない)であり、年齢下限は20歳、年齢上限:85歳とした。また、本研究への参加に対し説明文書を用いて説明を行い、研究対象者本人から文書同意を取得した者のみに限定した。また、抗精神病薬を内服中の者は選択基準から除外した。研究計画は2段階に分かれており、Part Ⅰでは研究対象者を通常診療を継続する群と、通常診療に加えて水素を投与する群に分け、水素による疼痛軽減効果の有無及びおよび治療効果を比較・検討する。水素の投与は水素ガスの吸入または水素ゼリーの服用で行う。Part ⅡではPartⅠの結果を踏まえて、水素治療群とプラセボ群に分け、無作為化二重盲検群間比較試験を実施して水素による慢性疼痛の治療効果及びおよび有害事象について確認する。PartⅠにおける主要評価項目は介入後3カ月時の群間の対数化痛み度の変化量であり、ニプロ社のPAINVISIONにより測定する。副次評価項目は介入前と、介入後1・2・5および10週時の群間の対数化痛み度の変化量である。PAINVISIONは昨年度に本予算で購入した。現在、PartⅠの結果待ちである。
3: やや遅れている
研究対象者の確保などが予定通り進まず、計画が遅れている。
なるべく早くPart Iを終了させて結果を吟味し、Part Ⅱに移行したい。
新型コロナによる学会の中止に伴い、学会旅費などが不要になった。次年度以降の学会旅費として使用する予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Journal of Neuroscience Research
巻: 99 ページ: 1666-1688
10.1002/jnr.24827