研究課題/領域番号 |
21K16556
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
木下 裕貴 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (70897660)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 術後譫妄 / 脳波 / α波 / 炎症 / 高齢者 / 好中球・リンパ球比 / 血小板・リンパ球比 |
研究実績の概要 |
本年度に関してはこれまで行ってきたプロポフォール、レミフェンタニルを中心とした全静脈麻酔下に施行された頭頚部癌・食道癌根治術手術患者において、プレセプシン、プロカルシトニン、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン、C 反応性蛋白、好中球・リンパ球比の各種炎症性マーカーの測定および脳波周波数解析を麻酔導入時より経時的に測定する研究のデータ収集を完了した。脳波全帯域パワーに対するα帯域パワーの比率 (Relative ratio of alpha wave) は、解析全期間で譫妄群が非譫妄群に比べ低値となった。その中でも麻酔導入後において最も群間差があり、群間差は経時的に小さくなった。譫妄患者の麻酔導入後のα波の相対比の低下、およびコントロールの好中球・リンパ球比が高値であったことは、脳の脆弱性に伴って生じる現象であることを示唆した。一方、コントロールの好中球リンパ球比以外の各種炎症マーカーの経時的変化は2群間において有意差を認めず、同等の侵襲の手術における譫妄患者の予測は、炎症性マーカーよりも脳波測定の方が優れていることを示唆した。これらの研究成果は現在論文投稿の段階である。また、、同様の研究でデスフルラン下の全身麻酔中の脳波変化と譫妄の関連についての検討を現在行っている。 上記に加えて脳の脆弱性を術前に同定するという内容の研究を、頭頚部癌根治術・食道癌根治術において後ろ向きに検討した。白血球の分画から容易に算出できる好中球・リンパ球比と血小板・リンパ球比の術前値と術後譫妄について解析したところ、好中球・リンパ球比がいずれの手術患者においても譫妄群で高く、譫妄の予測マーカーになりうること示唆した。これらの後ろ向き研究についてはそれぞれ論文化し、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では本年度の時点で譫妄・非譫妄患者におけるレミマゾラムを用いた全身麻酔中の脳波変化について検討する予定であったが、COVID-19流行に伴う静脈麻酔薬の入手が困難な状況となり、予定通りの研究を行うことができなかった。また、これまでICUにて譫妄評価を体系的に行うことが可能であったが、COVID-19流行に伴って予定手術患者のICU入室制限が生じ、一般病棟での譫妄の評価が困難であったため研究を予定通り行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で、術前の脳の脆弱性が術後譫妄発症において重要な要素であることを示すことができたと考えている。現在進行中の譫妄患者におけるデスフルランの脳波変化に加え、レミマゾラムを使用した全身麻酔においても譫妄患者において特異的な脳波変化が起こるかについて検討を行う。また、頭頚部癌・食道癌根治手術以外の手術においても同様の変化が起こるかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究の方向性を探るため、既存のコンピュータを用いてデータ収集・解析を行ってきたため、一部次年度使用額が生じた。次年度に関しては大量データを解析するための高精度コンピュータやGPUの購入を検討したいと考えている。更にBISモニター電極や試薬などの消耗品に加え、論文投稿費・海外学会の費用として研究費を使用することを検討している。
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