研究課題/領域番号 |
21K16560
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
卜部 智晶 広島大学, 医系科学研究科(医), 専門研究員 (70816347)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PKC / プロポフォール / 細胞内カルシウム / レミマゾラム |
研究実績の概要 |
1)プロポフォールのPKCへの結合部位の同定:。PKCαとPKCδについC1A、C1B(脂質結合ドメイン)、C2ドメイン(カルシウム結合ドメイン)の欠損変異体を作成し、それら変異体のプロポフォール誘発性PKCトランスロケーションを検討したところ、プロポフォールはPKCαにおいては、C1A、C1Bドメインに、PKCδにおいては、C1Bドメインに結合しトランスロケーションを誘発することが明らかとなった 2)プロポフォールの細胞内でのPKC活性化部位の同定:細胞内でのPKC活性化をリアルタイムで検出できる蛍光インジケーターCKARを用いた。HeLa細胞にCKARを細胞膜、ゴルジ体に発現させて、プロポフォールを投与するとPKCが経時的に活性化した。また、それらの活性化能力は、PKC活性化薬のフォルボールエステルよりに匹敵するか、むしろ高かった。 3)プロポフォール誘発性PKC核内トランスローションのメカニズム:プロポフォールはPKCζを核内にPKCトランスロケーションすることを明らかにしたので、そのメカニズムを検討した。プロポフォールは、PKCに限らず、様々なタンパクを核内外に均等になるように移動させることが分かった。またそのメカニズムにNESやNLSなどのタンパク質核内移入、核外排出機構は関与しないことも明らかとなった。 4)新規静脈麻酔薬レミマゾラムの細胞内カルシウム上昇機構の解析:高濃度のレミマゾラムは、主に小胞体からの動員により細胞内のカルシウムを上昇させることを明らかにした、またその上昇にはGタンパク質共役受容体、PLC、IP3受容体が関与することも解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロポフォールのPKCへの結合部位を同定し、その結果に基づいた研究として、結合ドメインの過剰発現のPKCトランスロケーションに対する研究を行っている。 プロポフォールのPKC核内トランスロケーションのメカニズムを明らかにした。 プロポフォールと同様の静脈麻酔薬であるレミマゾラムの新たな効果発揮機構として、細胞内カルシウム上昇を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
①プロポフォールにより惹起されるシグナル伝達機構の網羅的解析:プロポフォールにより活性化したPKCは、様々なタンパク質をリン酸化させ、あるいは遺伝子発現を誘導すると考えらえる。血管痛やPRISの原因となりうる分子がそれらに含まれる可能性が大きい。そこで、以下を検討する 1)プロポフォールを処置したHUVECsをリン酸化プロテオミクスに供し、プロポフォールが誘導するリン酸化タンパク質を網羅的に検索する。候補としてNO合成酵素(NOS)などが想定される。 2)同様にプロポフォール処置HUVECをRNA-sequenceに供し、プロポフォールにより発現が変動する遺伝子を網羅的に解析する。 ②プロポフォール誘発性PKCトランスロケーションを抑制する薬物や物質の検索と効果の判定:PKCのC1Bドメインに結合すると考えられる薬物がPKCトランスロケーションを制御することが出来るかを検討する。またこれらの薬物が、プロポフォールによるPKCリン酸化を抑制するかも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度予定していたリン酸化プロテオミクス、RNAseqなどの網羅的解析は、今年度実施することとなった。そのため、昨年度繰り越した研究費を使用することを計画している。
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