研究実績の概要 |
本研究の核心は、このPropofol Infusion Syndromeの発症メカニズムを解明することにある。プロポフォール投与が骨格筋のautophagyを賦活化するという報告はあるが、PRIS発症とautophagyとの関係については、確立された結論は出ていない。PRISの発生頻度自体は低いが、一旦発症してしまえば致死的な症候群である。しかし,PRISの発症メカニズムや治療法は現在でも不明のままである。本研究では、PRISの発症機序にmitophagy機能不全が関与しているという仮説を設定し、細胞実験にて検証する事を目的である。 筋芽細胞を用いて、実験を遂行した。プロポフォール投与にて筋芽細胞のミトコンドリアが破壊され、それがプロポフォールの容量依存性であることが判明した。しかし、プロポフォールの臨床濃度において健常な筋芽細胞ではミトコンドリアは修復された。そこで、筋芽細胞に酸化ストレスを与えた後に、プロポフォール投与を行なったところ、ミトコンドリアが修復されず、細胞死が増えた。この実験経路にmitophagyの活性を同時に測定したところ、酸化ストレスを与えられた筋芽細胞ではmitophagyの活性が低下していた。これらの結果は我々の仮説を支持する実験結果となった。 最終年度は、協力機関であるハーバード大学でのデータを追加し、データ解析を行なった。それらのデータから我々の仮説がより強く証明できる結果となった。しかし、更なる追加実験を行うことで研究成果がまとまる。本研究では、論文化まであと少しの段階まで進めることができた。
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