研究課題/領域番号 |
21K16565
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
長島 史明 東京医科大学, 医学部, 助教 (10617682)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心停止 / 心停止後症候群 / サイクロフィリンD / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
これまでの我々の教室の研究により、虚血性神経細胞死解析からCyclophilin D(CypD) を介した細胞死・アポトーシス情報伝達系がMitochondrial permeability Transition (MPT) 誘発ミトコンドリア機能不全の中心を担うことが分かっている。 CypDはミトコンドリア特異的に発現している物質で、MPTpore 開孔に重要な因子であり、CypD KOマウスでは細胞死が抑制されることが、外傷性脳障害や多発性硬化症モデルでは示されているが、心停止後の脳神経細胞死発現におけるCypD情報伝達系の役割やミトコンドリア代謝機能との連関は明らかではなかった。 そこで、今回、8週齢から12週齢のC57BL6Jマウスの野生型とサイクロフィリンDノックアウトマウスを用いて、塩化カリウム投与による心停止蘇生後の生存率や心停止後脳障害をはじめとする心停止後症候群にサイクロフィリンDの欠損が与える影響を調べた。その結果、野生型マウスと比較してサイクロフィリンDの欠損マウスの心停止蘇生後の生存率や神経学的所見改善させることが分かった。すなわち、サイクロフィリンDは心停止の際の生存率や蘇生後の脳障害に対する新たな治療標的になり得る可能性があることが判明した。今後はサイクロフィリンDノックアウトと同じ状態を誘導することができるシクロスポリンAを用いて、既存の薬であるシクロスポリンAが心停止蘇生後の治療戦略になり得るかを検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床業務による研究時間確保が難しい時期や、使用しているノックアウトマウスが生まれない期間があったりしたため、実験がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
サイクロフィリンDの欠損が心停止蘇生後の生存率や神経学的所見の改善につながることが判明したため、今後は蘇生後の脳の病理組織の比較やqPCRを用いて炎症マーカーの比較などを行う。またサイクロフィリンDの欠損と類似した作用を引き起こすことができると知られている既存の薬にシクロスポリンがあるが、シクロスポリンの投与が心停止蘇生後のマウスの生存率や神経学的所見にどのような影響を与えるかを検討し、新規治療戦略になり得るかどうかの検討を行う。 その後、新規治療戦略の開発として心停止蘇生後のマウスにミトコンドリア移植治療を行い、効果を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に行う予定であった、心停止後脳障害発症による脳内BCL-2 family発現、神経細胞死・アポトーシス形成における脳内CypD/SIRT3情報伝達系の果たす役割と連関解析を行うとともに、令和4年度に行う予定である研究を進めていく予定である。
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