研究課題
近年感染症や生活習慣病などの臓器障害の原因として、血管内皮細胞の障害が注目されている。健常な血管内皮細胞の内膜面には細胞表面を覆うように多糖類やタンパク質で構成されるグリコカリックスと呼ばれる層が存在し、微小循環の恒常性維持に重要な役割を果たしている。血管内皮グリコカリックスは糖尿病でも障害を受けることが知られている。インスリン非依存型(2型)糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両者により発症する。2型糖尿病患者では、一般に罹病期間が長くなるにつれて、食事運動療法で血糖コントロールが 可能であった患者でも薬物療法、さらにはインスリンを含む多剤併用療法が必要になってくることも多い。この背景には緩徐ではあるが進行性のインスリン分泌不全の進行が考えられるようになってきた。そこで、2型糖尿病に出現するインスリン分泌不全の進行に膵臓の血管内皮グリコカリックス障害を通した毛細血管障害が関与している可能性について2型糖尿病モデルとしてdb/dbマウスを使用し、4週齢、6週齢、9週齢、12週齢で採血を行い血糖値並びに血中インスリン濃度を測定した。dbマウスの血糖値は6週齢から12週齢にかけて上昇している。血中インスリン濃度は9週齢まで上昇後、12週齢では低下する。9週齢から12週齢まで血糖値に対して血中インスリン濃度は低い状態が続き、インスリン分泌不全といえた。膵ランゲルハンス島のサイズを計測したところ、db/dbマウスではWTマウスに比べ6週齢、9週齢ともに有意に膵臓のランゲルハンス島のサイズが増大しておりランゲルハンス島の過形成が認められた。また免疫染色でインスリンを描出し、インスリンを産出するβ細胞数を計測したところ、db/dbマウスではWTマウスに比べ6週齢、9週齢ともに有意に細胞数は増加しており、ランゲルハンス島の過形成はβ細胞の増殖による影響を受けていると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り進んでいるため
電子顕微鏡による正常と血管炎状態での膵臓毛細血管内皮GCX構造の同定、ならびに血管炎誘発下でのインスリン分泌不全の検討を行う。
電子顕微鏡サンプル作成時に使うダイアモンドナイフが欠けずに使用できたため、次年度に繰り越すことができた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (26件) 備考 (1件)
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