研究実績の概要 |
敗血症マウスにおいて、後天的にCD4T細胞、CD8T細胞を欠失させるモデルを作成した。その結果、脳内のCD4T細胞は検出限界以下であったのに対し、CD8T細胞は約半分の減少であった。CD4T細胞を欠失させたマウスではマイクログリアの活性が敗血症誘導から30日目まで維持されており、IL-1βは他群と比較して高値である一方、IL-10は低値であった。すなわち、脳内にCD4T細胞が枯渇すると敗血症性脳症が遷延していた。これに伴い行った敗血症マウスの行動試験(ショ糖水選択試験と強制遊泳試験)では、CD4T細胞を欠失させたマウスでは、不安症および不安様行動の回復が遅延した。 なぜ、敗血症後の脳にT細胞が増えるのか?という疑問に応えるため、まず、脳内T細胞の増殖マーカーを解析した。その結果、増殖マーカーであるKi67発現は、CD4T細胞はCD8T細胞と比較して、極めて低かった。このことから、CD4T細胞は敗血症後、脳内に浸潤してくることが予測された。そこで脳内のケモカインを敗血症誘導から経過時間的に調べたところ、Cxcl9, 10が15日目に、Cx3cl1が30日目に増加していた。これをもとに、T細胞のケモカイン受容体発現を調べたところ、ターゲットとする制御性T細胞ではCXCR3の発現が高かった。このことから、Cxcl9,10-CXCR3 axisでTregは浸潤したことが示唆された。その由来を明らかにするため、脳のdraining lymph nodeである頸部リンパ節の解析を行った。その結果、敗血症誘導から20日目において頸部リンパ節のCXCR3陽性制御性T細胞の割合が顕著に増加していた。
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