研究課題/領域番号 |
21K16574
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
板垣 大雅 徳島大学, 病院, 特任教授 (10464116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 横隔膜保護 |
研究実績の概要 |
本課題の主たる目的は、人工呼吸管理が横隔膜機能に与える影響を多角的に検討し、その予防に資する知見を見出すことである。本課題に関連して2019年より行ってきた研究である「人工呼吸開始後早期のdouble cyclingが横隔膜厚の変化に与える影響」を完了させ、学会発表(第43回日本呼吸療法医学会学術集会)を行い、優秀演題賞を獲得した。また、英語論文を学術誌に投稿し、現在査読中である。この研究の概要は以下のとおりである。 人工呼吸中の横隔膜の萎縮や肥厚が不良な転帰に関係することが指摘されているが、患者と人工呼吸器が同調性を失った状態の中でもとりわけ肺傷害的とされる「double cycling(二段呼吸)」が横隔膜の形態的変化に与える影響については過去に検討されていない。よってこの研究では、double cyclingが横隔膜の形態的変化を招くという仮説を検証した。気管挿管下に48時間以上の人工呼吸管理が見込まれる18歳以上を対象とした。超音波診断装置を用いて人工呼吸1、2、3、5、7日目に横隔膜厚を測定し、人工呼吸開始初日からの最大変化率を求めた。同時に人工呼吸1、2、3日目に吸気努力の指標である食道内圧とdouble cyclingの頻度を求め、横隔膜厚の最大変化率との相関を求めた。その結果、人工呼吸3日目のdouble cyclingは強い吸気努力を伴い、横隔膜厚の変化に関係する可能性が示唆された。 また人工呼吸器関連横隔膜機能障害について、知識の整理と社会的認知度の向上のために和文および欧文で総説を執筆した。和文総説は採択され、英文総説は査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「人工呼吸患者において呼気努力が肺容量および横隔膜収縮に与える影響に関する検討」と題した研究計画書を施設研究倫理審査委員会に提出し承認された。近年、呼気時に腹筋群が過剰に使用されること(呼気努力)が不良な転帰と関係する可能性が指摘された。横隔膜は肺容量の減少を抑えるために呼気時にもわずかに収縮しているが、そもそも呼気時の収縮は横隔膜傷害的とされている。強い呼気努力があると肺容量が減少するため、この時横隔膜は強く収縮し傷害を受けるかもしれず、これを明らかにするための研究を開始した(患者登録中)。この研究の主要な測定項目に経横隔膜圧がある(胃内圧と食道内圧の差から求まる)。期間の前半を利用し、両内圧の同時測定系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
「人工呼吸患者において呼気努力が肺容量および横隔膜収縮に与える影響に関する検討」の患者登録を進める。この研究の対象は、呼気努力が生じやすい呼気流量制限のある人工呼吸患者3としている。当院ICUにおいて年間に見込まれる成人人工呼吸患者が100症例程度であり、報告のある呼気流量制限発生率が30%程度なので、除外率を50%とすると15名程度の患者登録を目標に研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度の研究に必要な研究用機器の購入を一部行ったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は臨床研究をスタートさせるため、残りの必要な研究用機器購入のために次年度研究費(消耗品購入費、学会参加費など)と合わせて使用する予定である。
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