研究課題/領域番号 |
21K16574
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
板垣 大雅 徳島大学, 病院, 特任教授 (10464116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 横隔膜保護換気 / 呼気努力 |
研究実績の概要 |
本課題の主たる目的は、人工呼吸管理が横隔膜機能に与える影響を多角的に検討し、その予防に資する知見を見出すことである。近年、人工呼吸器からの離脱に失敗した患者の呼気筋群の収縮力が低下していることや、呼気筋群を用いた呼吸様式(呼気努力)が次第に強まるような患者が人工呼吸器からの離脱に失敗しやすい可能性が臨床研究で示され、呼気筋の影響に注目が集まっている。横隔膜機能の低下は人工呼吸器離脱を遅らせ、人工呼吸患者の不良な転帰に関係するが、呼気努力が横隔膜機能に与える影響は判っていない。 令和3年度から令和4年度に確立した胃内圧、食道内圧の同時測定系を用いて患者登録を開始し、努力呼気が横隔膜機能に与える影響についてデータ取得を行った。令和5年度には努力呼気に影響を与えうる要素としてオピオイドの使用に着目し横隔膜機能に与えるオピオイドの影響の観察を開始した。引き続き患者登録を進める。 令和5年度より超音波診断装置を用いた腹直筋、腹横筋。内腹斜筋、外腹斜筋からなる呼気筋群の活動評価を開始した。これら呼気筋群を用いた努力呼気は人工呼吸器からの離脱失敗に関係することなどが指摘されており、注目が集まっている。主に人工呼吸器離脱後の患者における呼気筋群と横隔膜の活動を同時に評価し、相互の関連を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
横隔膜機能を評価するためには胃内圧測定が重要な要素となる。現在胃内圧測定のために圧測定用のバルーンを胃内に留置しているが、本邦で入手可能なバルーンは径が細く柔らかいため、既に食道内圧測定用のバルーン付き経鼻胃管が留置されている症例には胃バルーンを留置することが極めて難しいことが判明した。胃管留置に先駆けて胃バルーンの留置を行っても食道バルーンの位置調整によって胃バルーンの位置が容易に変動してしまうという問題も発生している。これより研究の進展に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
医原性横隔膜損傷に影響を与えうる要因として呼気努力があり、胃内圧の測定によりこれを評価することができ、胃内圧と食道内圧の差から求まる経横隔膜圧が横隔膜活動の直接的なパラメータである点からも胃内圧は本研究で最も重要な観察項目である。しかし、上述の理由により測定困難状態にある。これを解決するために、食道バルーンと胃バルーンの2つを装備した経鼻胃管を輸入して経横隔膜圧の測定を行い、本研究を継続する予定としている。 また、令和5年度より超音波診断装置を用いた腹直筋、腹横筋。内腹斜筋、外腹斜筋からなる呼気筋群の活動評価を行っている。これら呼気筋群を用いた努力呼気は,呼気障害が存在するCOPD患者に特徴的だが,呼吸負荷が増大した場合にも見られる。近年、人工呼吸器からの離脱に失敗した患者の呼気筋力が低下していることや、呼気努力が次第に強まるような患者が人工呼吸器からの離脱に失敗しやすい可能性が臨床研究で示され、呼気努力の影響に注目が集まっている。そこで研究代表者らは、昨年度より人工呼吸器離脱後の患者を対象として、呼気筋及び横隔膜の活動を超音波診断装置で評価し、これに与える高流量経鼻酸素療法の影響を調査している。高流量経鼻酸素療法は弱い気道内陽圧や死腔洗い出し効果などによる呼吸仕事量軽減効果が証明されており、抜管失敗リスクの高い患者に有用な酸素療法とされているが、この酸素療法が努力呼気に与える影響を検討した報告は知り得る限りない。この検討が人工呼吸中の呼気筋と横隔膜の相互関係の理解に資するものと考え推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度の研究に要した消耗品は初年度購入分で賄うことができ、予定していた出張の取りやめにより旅費も使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度の研究費と合わせて消耗品購入、成果発表等のための学会参加費に使用する予定である。
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