研究課題/領域番号 |
21K16578
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
東郷 好美 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (40648622)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ECMO / cannula / catheter / 脱血カニューレ / 脱血管 / カニューレ / カニューラ / veno-venous ecmo |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、良好な酸素化を得るために最適なカニューレの特性をサイドホールに焦点を当てて明らかにすることである。当該年度は、静脈脱血静脈送血方式膜型人工肺(veno-venous extracorporeal membrane oxygenation, V-V ECMO)用カニューレのサイドホール部分の長さの違いによる酸素化効率を解明することを目的としている。本研究の成果は、V-V ECMOのための最適なカニューレを選択する指標となり、適切なカニューレの選択が効率的な酸素化につながることによって、重症呼吸不全患者のECMO離脱率が向上することが期待できる。
はじめに、先端から(a)15cm、(b)10cm、(c)5cmまでにサイドホールを付けたカニューレをそれぞれ作成した。次に、模擬回路を使用し、ブタ血液の酸素飽和度を60±5%、二酸化炭素分圧を80±20mmHgに調節することに取り組み、調節することが可能になった。この状態で、人工肺へ血液酸素流量比1:1、酸素濃度100%で酸素ガスを流し、ECMOを開始する検討を始めた。(b)10cmのカニューレを用いた検討では、心拍出量が4L/minでECMO流量が2、3、4、5L/minのとき、再循環率は10、17、29、40%であった。また、心拍出量が5L/minでECMO流量が2、3、4、5L/minのとき、再循環率は9、13、28、34%と心拍出量が多いほど再循環率が低いことが明らかになった。一方で、心拍出量が4L/minでECMO流量が2、3、4、5L/minのとき、4分後の酸素分圧は124、171、177、388mmHg、心拍出量が5L/minでECMO流量が2、3、4、5L/minのとき、4分後の酸素分圧は183、187、456、760mmHgと心拍出量が多いほど酸素化が良好であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響により血液ガス分析装置の納期が遅れたため(2022年1月納入)、検討が開始できなかった。さらに、模擬回路を使用し、ブタ血液の酸素飽和度を60±5%にした状態で検討を開始する必要があるが、その調節実験に時間を必要とした。しかし、ブタ血液の酸素飽和度に加え、二酸化炭素分圧も80±20mmHg程度に調節することができた。そのため、酸素化効率だけでなく、脱二酸化炭素効率も検討することが可能になった。さらに、人工肺へ血液酸素流量比1:1、酸素濃度100%で酸素ガスを流した後、ECMOを開始し、血中酸素飽和度、血中酸素分圧、血中二酸化炭素分圧を測定する検討を開始した。2022年8月末までにデータを取り終わる予定である。データ数が集まり次第、日本人工臓器学会や日本医工学治療学会にて発表をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ECMO用カニューレのサイドホール部分の長さの違いによる酸素化効率を解明した後、次に、ECMO用カニューレのサイドホールの間隔の違いによる酸素化効率を解明する。 先端から(a)1cmごと、(b)3cmごと、(c)5cmごとにサイドホールを付けたカニューレを作製する。検討手順は、①模擬回路を使用し、ブタ血液の酸素飽和度を60±5%にした状態をつくる。②人工肺へ血液酸素流量比1:1、酸素濃度100%で酸素ガスを流し、ECMOを開始する。③血中酸素飽和度、血中酸素分圧、血中二酸化炭素分圧を測定する。④(a)から(c)のカニューレのうち、どのカニューレにおいて血中酸素飽和度、血中酸素分圧が最も高く、血中二酸化炭素分圧が最も低くなるかを比較し、血中酸素飽和度、血中酸素分圧が最も高く、血中二酸化炭素分圧が最も低いカニューレを酸素化および脱炭酸ガス化効率が最良のカニューレと定義する。この検討は2022年9月から開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行に伴い、学会への出席を控えたため、旅費が発生しなかった。また、検討に必要な物品を揃えるために時間がかかり、検討を開始できたのが2022年2月からであった。そのため、検討に必要な、血液ガス分析装置のカートリッジ、ブタ血液、人工肺などの購入も遅れ、次年度使用額が生じた。これらの消耗品を2022年度に購入し、検討を進める予定である。
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