研究課題/領域番号 |
21K16593
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
木下 真央 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20816384)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SARS -CoV-2 / 血清抗体価システム / 特異的高力価免疫グロブリン製剤 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(SARS-CoV-2)は、特異的なワクチンが存在せず標準的な治療薬はない。さらなるウイルスの変異の進行や創薬開発の急務から、より順応性の高い自己免疫を応用した治療戦略が求められている。そこで先行研究・技術を応用してコロナウイルスタンパク免疫化マウスの血清を用いて抗体価解析を実施し、新型コロナウイルス感染症に有効な表面抗原を探索する。それに対する特異抗体を精製することによって、今後のウイルスの変異能力や創薬開発の見地からも適応性・実用性が高い治療薬が開発できる。本研究では、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD) 、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質 S1 と新規開発の CpG デオキシオリゴヌクレオチド(ODN)または従来から利用されてきた水酸化アルミニウム(ミョウバン)アジュバントを組み合わせたワクチンをマウスの鼻腔内または皮下に投与しました。そして、血清特異的 IgG 力価、肺胞洗浄液中の IgA 力価、および中和抗体力価を分析しました。RBD タンパク質の経鼻投与は、肺胞洗浄液中の血清 IgG または IgA 力価の増加につながりませんでした。しかしながら、CpG-ODN とともに S1 タンパク質を投与した鼻腔内投与グループ、およびミョウバンとともに S1 タンパク質を投与した皮下グループでは、血清 IgG の有意な増加が観察されました。 S1 タンパク質と CpG-ODN を鼻腔内投与した後のみ、肺胞洗浄液中の IgA および IgG レベルが有意に増加しました。血清および気管支肺胞洗浄液の中和抗体力価は、鼻腔内 S1-CpG で他のすべてのグループよりも有意に上昇しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 研究計画の大枠としては以下を計画していた。 1. SARS-CoV-2の遺伝子解析、遺伝子組換えタンパク質の精製、2. マウス免疫化モデルの確立、3. 血清抗体価測定システムの構築、4.データをまとめ論文化できた。新たな知見から更なるプロジェクトを遂行する。 上記プロジェクトに関して概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
新規抗原タンパクを同定や特異的高力価免疫グロブリン製剤の精製とヒト体内動態における効果発現の評価を施行し、新たに人類に危険を及ぼす致死性の高い新型ウイルスが発生しても表面抗原の特異的抗体を変化させることにより簡便で順応性の高い治療薬を精製する。さらに経鼻と皮下投与におけるワクチンのブースト効果について検討を深めた結果、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質 S1を抗原とし、CpG デオキシオリゴヌクレオチド(ODN)をアジュバントとした経鼻ブースト投与は複数回の投与が必要であることがわかった。脾臓細胞など免疫細胞におけるサイトカインや細胞表面型の分析をさらに深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな研究結果の解析に伴って、当初予期し得なかった新たな知見が得られました。更なる創薬の開発や治療方法を模索するために、新たな知見の分析を行う研究計画の変更が必要となったため。
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