研究実績の概要 |
妊娠ラットを安楽死後に開腹して子宮内の胎仔周囲の羊水を吸引・採取、培養した幹細胞を温度応答性の培養皿に播種してアスコルビン酸入りの培養液で培養継続することで、細胞シートが作成可能であることが実証できた。妊娠ラットを全身麻酔下に小開腹し、子宮胎仔の背中に幹細胞シートを貼付・固定することで移植が可能であることが確認できたが、胎児脊髄髄膜瘤モデルの安定した作成が困難であり、予定の実験遂行ができなかった。そのため、作成した羊水幹細胞シートの治療効果を検証する目的で、ラット脊髄損傷急性期モデルに対して損傷部硬膜外幹細胞シート移植実験に切り替え、治療効果を後肢運動機能で評価した。細胞数100,000の羊水幹細胞シートを硬膜外に貼付し、4週間後まで後肢運動機能を評価したが、コントロール群と比較して優位な治療効果は認められなかった。 本研究の成果としては、ラットの羊水から幹細胞シートを安定して作成させる技術は確立できたため、様々な疾患モデルの治療研究に応用できる可能性は示唆された。 また、脊髄損傷においてはこれまで様々な幹細胞治療実験や臨床応用が行われ、移植経路や時期、移植形態の違いによる効果の違いが報告されており、ラットの急性期脊髄損傷モデルにおいて、損傷部硬膜外に羊水幹細胞シート移植の治療効果を検証した実験は初めてであると考えられる。細胞数100,000の幹細胞シート移植は有効な治療効果がではない可能性が示唆されるものであったが、これまでも報告されている細胞移植の時期・方法における違いが重要であることが確認できた一方、硬膜外移植は硬膜内脊髄背側移植よりもさらに大型の幹細胞シート移植が可能となるため、細胞数を増やしたシート移植も可能であると考えられ、今後の更なる検証が期待されるものであった。
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