脳梗塞を発症することで生じる神経機能障害に対する有効な治療法はリハビリテーションのみである。しかし、発症から時間が経過することでリハビリテーションによる機能改善効率は低下し、後遺症として生涯にわたり定着する。本研究は、脳梗塞後リハビリテーションの慢性期神経機能後遺症に対する改善効率を増大させることを目的とした、神経機能再生治療研究である。その方法として、中枢神経系に内在している再生機能に着目し、mRNA医薬によりその再生効率を増大させることで神経機能後遺症の改善を図ることを目標とした。 2022年度までに、齧歯類脳梗塞モデルにおいて慢性期リハビリテーションの神経機能改善効率低下にastrocyteが強く関与することを明らかにした。さらに、astrocyteの遺伝子発現解析の結果、神経傷害性phenotypeとして知られるA1 astrocyteに特異的に発現している遺伝子の発現増加が認められた。これらの結果は、astrocyte phenotypeを、神経傷害性A1から神経保護性A2へ変換することが、慢性期リハビリテーションの神経機能改善効率低下を改善するための治療標的たりうることを示す結果であると考えられた。 これらの結果を踏まえ2023年度は、astrocyte in vitroモデルにおいて、mRNA医薬により強制発現させることで、astrocyte phenotypeを神経保護性へ変換する治療遺伝子探索研究を行った。先行研究において、astrocyte phenotypeとの関連が示されている神経保護因子ファミリーに着目し、これらをmRNA医薬により強制発現させることで、in vitro model上でのastrocyte phenotypeの変化を、RT-PCR法による解析を行った。
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