研究課題
今年度(2年目)は老年マウス(18-20ヶ月齢)を導入し、老年マウスの腸内細菌叢収集、評価及び老年マウスに対する前視交叉槽注入法でくも膜下出血導入後の早期脳損傷の状態について、若年マウス(2-3ヶ月齢)と比較しながらの評価を行なった。老年マウスではくも膜下出血を導入した際の早期脳損傷の程度が若年マウスと比較してより顕著であり、24時間以内の致死率も優位に高かった。高い致死率のため、神経学的スコアなどの項目収集には難渋したが、出血量を調整し、予定通りの頭数を確保することができた。今後は老年マウスに対して抗生剤投与を行った上で若年マウスの便移植を行うことで、腸内細菌叢を変化させた老年マウスを作成し、その後にくも膜下出血を導入した際に早期脳損傷が軽減するかについて評価する予定としている。また一方で、逆に若年マウスに対して老年マウスの糞便移植による腸内細菌叢を導入した場合に、早期脳損傷が悪化するかについても同様の実験系で評価を行い、早期脳損傷と腸内細菌叢の老化の影響について検証する。並行して行っている臨床研究では、外来での未破裂動脈瘤患者における便検体回収、及びくも膜下出血患者の便検体回収を行い、腸内細菌叢解析を行っている。今後同じ患者の血液検体から得られた一塩基多型(SNP)も含めた検討を追加し論文報告を行う予定である
2: おおむね順調に進展している
老年マウスに対するくも膜下出血導入初期は、直後の致死率が高く早期脳損傷の評価を十分に行うことができていなかったが、血液注入量や麻酔量の調整により安定したモデル作成が可能となった。引き続き老年マウスに対するくも膜下出血実験を進めていく。臨床研究面では、未破裂脳動脈瘤、くも膜下出血患者の便検体回収が目標数に達したため、メタゲノムショットガン解析を行なった。
基礎実験では老年マウスと若年マウスの腸内細菌叢を入れ替えた場合に生じるくも膜下出血後の早期脳損傷の変化について、脳実質の免疫染色、脳実質内の細胞分画などの評価を進め結果を総括していく。臨床研究では、一定数の検体が収集できたため、得られた解析結果を解釈し論文報告する予定である。
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Translational Stroke Research
巻: 15 ページ: 87-100
10.1007/s12975-022-01112-6