虚血性脳卒中(脳梗塞)の主要な原因の一つである頭蓋内主幹動脈狭窄は、アジア人種に発症が多く,遺伝的な要因が関与すると報告されている。近年、もやもや病の疾患感受性遺伝子としてring finger protein 213 (RNF213)上の単一のミスセンス変異が、もやもや病のみならず、様々な程度の頭蓋内主幹動脈狭窄に関連することが明らかになってきた。頭蓋内主幹動脈狭窄を有する患者の大部分は、比較的高齢で高血圧、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患を有しており,アテローム性動脈硬化による動脈狭窄病変と診断される症例である。そこで、本研究においてはRNF213遺伝子変異に高血圧、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患の病態への関連性を明らかにすることを目的に、新規動物モデルを作製する。このような頭蓋内主幹動脈狭窄モデルの作製の試みは、原因の解明に加え、新たな治療法開発へ結びつくことが期待できる。既に我々は、RNF213欠損マウスを作成しているが、SonobeらはRNF213欠損モデルを用いて、もやもや病疾患モデルの確立を試みている。しかし、胎児や発達過程は正常で、もやもや病を発症しなかった。また、血管壁肥厚を誘導するモデルである総頚動脈結紮を用いて、血管壁における病理組織学的変化について評価したところ、RNF213欠損モデル群において、頸動脈の動脈硬化性変化は軽減していた。RNF213遺伝子変異は、頭蓋内アテローム性動脈硬化症との関連も報告されており、その解明は非常に重要なものとなる。我々は、感受性遺伝子である、RNF213遺伝子変異の存在に高血圧、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドロームが加わると、表現型として頭蓋内アテローム性動脈硬化症を発症するのではないかと考え研究を行った。
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