研究課題/領域番号 |
21K16616
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤川 真由 東北大学, 大学病院, 助教 (80722371)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | てんかんモニタリングユニット / 心理社会的評価 / 尺度の標準化 / QOL / 就労 / リハビリテーション心理学 / てんかん外科 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、てんかん患者に特化した心理社会評価尺度の信頼性・妥当性検証により、包括的てんかん診療評価方法の標準化を目指すことである。さらに、臨床ニーズに対応した簡易版評価尺度の作成も行う。その背景には、てんかん診療において、医学的(客観的)評価による診断や治療パターンの標準化は確立されてきつつも、患者の心理社会(主観的)評価による患者の心理社会的パターンは標準化されておらず、標準的で系統的な介入支援が未確立であることが挙げられる。結果、患者の医学的治療が奏功しても心理社会的問題が残存し、治療効果が最大化されない現状がある。 2021年度の本研究機関での実施症例数(同意取得件数)は52例(成人38名・小児14名)であった。新型コロナ感染症の拡大の影響を受け,当該てんかんモニタリングユニット入院患者数が大幅に減少したため,予定していた実施症例数も減少した。しかし,てんかん患者の臨床情報、画像データ、認知機能、精神症状、QOLを含む心理社会的データ自体の内容の精密度は維持している。また、心理社会的評価尺度の中で妥当性が未検証なてんかんセルフスティグマと障害受容の尺度の日本語版についてはその解析も行ない、論文化した。また,障害受容については,抑うつやソーシャルサポートなどの心理社会的因子とともに,QOLの重要な促進因子であることを明らかにし,論文化した。興味深いことに,てんかんセルフスティグマは従来の先行研究ではQOLの有意な阻害因子であった。しかし,当研究の結果,障害受容の獲得によりセルフスティグマのQOLへの影響が非有意になることも解明され,さらなる障害受容の獲得のための心理的介入プログラムの開発が期待される裏付けとなった。さらに,てんかん患者のソーシャルサポートとQOLについても,従来の統計学的課題を解決すべくネットワーク解析という手法を用いて解析し、現在論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状での課題は,本年度は新型コロナ感染拡大の影響を受け,実施症例数(同意取得件数)が大幅に減少した。来年度の症例数の増加に期待したい。一方で,てんかんモニタリングユニットにおける入院患者のてんかん関連の臨床データは順調に収集できており、概ね使用する臨床データや解析方法の方向性が定まってきた。多施設コホート研究に向けて共同研究予定である機関からの承認も得た。現在、倫理委員会申請を行なっているため、来年度には共同研究が開始される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度と同様、引き続きデータ収集、登録を行う。共同研究機関との連携により収集データ件数は大幅に改善できる見込みである。本年度の研究成果を学会発表し、論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナ感染拡大の影響により、情報収集や学会成果発表が中止またはオンライン開催となったため、旅費の支出が大幅に少なかった。また、研究員の雇用時間が少なかったため人件費と物品費の支出が少なかった。そのため,次年度は研究員を増員し,共同研究機関とも活動を開始するため、繰越金も問題なく使用できる予定である。
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