研究課題
外傷あるいは疾患等による神経損傷に対する神経再建術(自家遊離神経移植、神経導管移植)は、国内外で実施されているものの、自家遊離神経移植は健常神経を犠牲にする等の点、また神経導管移植は対応可能な神経長や神経の太さに制限がある点や運動神経や混合神経に対する十分なデータが存在しない点など、現状の医療においても問題点が多い。神経損傷のうち脳神経損傷においては、顔面神経の切断・高度損傷が生じた場合は、舌下神経等をドナーとした神経再建術が行われているが、侵襲性が高い一方で十分な表情運動を得ることが難しいことから、依然課題が大きい。顔面神経麻痺は社会的に影響が大きく、アンメットメディカルニーズが高い領域である。また、顔面神経以外の重症脳神経損傷においては、有効な治療法は存在しておらず、新規治療の開発が嘱望されている。神経再建の医療材料として歯髄由来系細胞に着目し、ヒト口腔内から採取した間葉組織から誘導した神経幹・神経系細胞から作製した生着型神経束による新規再生医療の創出へ向け、重症神経損傷の課題解決にむけた実験を行った。共同研究者らとヒト口腔内間葉組織から得られた間葉系幹細胞から約1週間で神経幹・神経系細胞を分化誘導する方法を開発し(特願2019-91625)、さらには、血管網を内在した神経束を作製しており(特願2020-157646、特願2020-157621)、ラット顔面神経損傷モデルに対して作成した神経束を移植し電気刺激の活動電位の検出を確認し、顔面神経損傷モデルラットに対する移植実験を行っており、基礎的データを得た。また自らの研究を含めて重症神経損傷における移植医療のレビューを発表した。
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