研究課題/領域番号 |
21K16628
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
舟木 健史 京都大学, 医学研究科, 講師 (70555094)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | もやもや病 / 頭蓋内出血 / 頭蓋内外バイパス術 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、頭蓋内出血で発症し、頭蓋内外バイパス術を受けたもやもや病患者対象として、術後10年の長期予後を明らかにする多施設コホート研究である。研究3年目にあたる2023年度は、京都大学・国立循環器病研究センターの2施設における後方視的研究の論文化を進めるともに、京都大学で行っている出血予防を主目的とする直接バイパス手術戦略(targeted bypass strategy)の治療成績を全国学会で報告した。 出血発症もやもや病では血行力学的軽症例が少なくなく、虚血例と異なる手術戦略が求められる。近年当科では、出血予防を主目的とする直接バイパス手術においてperiventricular anastomosis (PA)が到達する皮質動脈に吻合を行う工夫(targeted bypass strategy)を行っている。もやもや病バイパス自験例(291半球)中、本戦略を適応した出血発症例が26半球存在した(平均年齢36.5才)。シングルバイパスを21半球に、複数タイプのPAを標的とするダブルバイパスを2半球に、内側型LSAを標的とするACAバイパスを3半球に施行した。3例ではEDAS解除や後頭動脈グラフトのinterposition等の特殊バイパスを要した。全例で術前計画通りに吻合を完遂でき、合併症の発生はなかった。術後慢性期におけるGrade-2 PAの退縮はLSAで73%、THAで100%、ChAで80%に認められた。追跡期間中に再出血を来したのは難治性内側型LSAを有する1例のみであった(出血率:0.99%/半球-年)。本戦略の手技は安全で実行可能であり、長期的出血予防に資することが期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は当科で行っている出血予防を主目的とする直接バイパス手術戦略について全国学会のシンポジウムで発表した。また、後方視的研究についても投稿準備段階にあり、前方視的研究についても倫理委員会申請準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
後方視的研究の結果を参考に多施設前方視的研究のプロトコルを作成し、研究参加施設決定を経て前方視的登録を開始する。最終的には、後方視的研究・前方視的研究の結果をもとに、難病研究班・学会と連携して出血発症もやもや病患者の長期追跡指針策定と、患者の長期追跡システム構築を目指す。また、研究を推進する上で、MRA等によるPA画像診断法の統一は重要な課題であり、PAを簡便に診断できるSTS-MIP MRA法などの普及・手法統一を目的とした研究等も検討される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度まで予定どおり研究が進行したが、一部の学会をリモート参加とした等の理由で、旅費等の使用額が少なくなった。この理由により次年度生じた使用額は、今後の研究論文化や前方視的研究に要する費用等に充てる予定である。
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