研究課題/領域番号 |
21K16630
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
長嶋 宏明 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00794950)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 悪性神経膠腫 / PARG / DNA複製異常 / WEE1 |
研究実績の概要 |
申請者は、先行研究においてIDH遺伝子変異を持つ低悪性度神経膠腫に対してテモゾロミド(TMZ)とPARG阻害薬を併用すると、IDH変異遺伝子特有の代謝脆弱性により顕著な抗腫瘍効果を示すことを発見した。高悪性度IDH野生型神経膠腫においても、PARG阻害薬によりTMZの抗腫瘍効果が著しく増強されるサブグループが存在することが明らかとなった。これらの研究を踏まえ本研究では、患者由来神経膠腫幹細胞株を用い、TMZとPARG阻害薬の併用療法が有効な悪性神経膠腫の特徴・遺伝子異常を明らかにすることを目標に研究を開始した。まず、 IDH野生型神経膠腫の中で、 PARG阻害薬の追加によってTMZの殺効果が増強されるサブグループを明らかにするべく、ハイスループットジェノタイピング法を用いて、患者由来神経膠腫幹細胞株の遺伝子変異や共欠失などの網羅的解析を行った。その結果、WEE1遺伝子の発現状態やリン酸化状態がPARG阻害薬単独やTMZとの併用に対する感受性に関与していることが示唆された。また、WEE1阻害薬によりTMZ+PARG阻害薬の薬剤感受性が変化することが確認された。IDH野生型神経膠腫では、PARG阻害薬単独やTMZ+PARG阻害薬併用療法は代謝脆弱性を利用し細胞死を誘導するのではなく、DNA損傷応答、特にWEE1経路の応答を介して細胞死に至る可能性が示唆された。また、TMZのDNA損傷応答経路にWEE1の発現が関与している可能性があり、TMZ耐性化に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的である TMZ治療におけるPARG阻害薬の致死増強規定因子(バイオマーカー)の候補として、DNA損傷応答や細胞周期(G2M期)の調整に関わるWEE1遺伝子が同定された。 しかし、当初の予備実験で得られていたFEN1遺伝子との関連は明らかにすることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
WEE1ノックアウトもしくはノックインを行い、TMZ+PARG阻害薬の感受性が変化するかどうかを調べる。また、近年開発された生体内安定新規PARG阻害薬(COH34、JA2131)の効果を、in vitro、in vivo両方で解析する。神経膠腫の新規治療法として、WEE1阻害薬(AZD1775)がTMZ+PARGの感受性を高める可能性があり、今後はWEE1の機能解析についても実験を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(未使用額が発生した状況) 2021年度にハイスループットジェノタイピング法を行い、その結果を基にFEN1遺伝子関連のターゲットシークエンスやFEN1阻害薬の効果判定を行う予定であったが、ハイスループットジェノタイピング法の結果が予備実験の結果と異なり、FEN1関連遺伝子関連経路の変化を示さず、WEE1遺伝子関連経路の変化を示した。そのため、計画を変更しWEE1関連遺伝子のウエスタンブロット解析などを行い、未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使用内容) このため、ターゲットシークエンス解析とシンポジウムでの発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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