研究課題/領域番号 |
21K16631
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
濱崎 佐和子 鳥取大学, 医学部, 助教 (80735267)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海馬 / アルブミン / 血管内皮細胞 / 小孔 |
研究実績の概要 |
血中アルブミンが海馬に到達する機序を明らかにするため、海馬の血管にタンパク質の通過を可能とする構造があるのか否かを、形態解析を主軸として調べている。毛細血管の内皮細胞における小孔形成や内皮細胞間結合(タイトジャンクション)の破綻の可能性を考え、走査型電子顕微鏡を用いた海馬毛細血管の微細構造解析、小孔やタイトジャンクションの構成に関わるタンパク質の免疫組織化学的な検出を試みた。走査型電子顕微鏡を用いた検討においては、脳の血管は末梢血管と比べて内腔側に糖鎖が高密度に存在しているため内皮細胞の細胞膜が露出されず、通常の試料作製方法では細胞膜に形成される小孔の構造解析が困難であることがわかった。そこで、小孔形成に関連するタンパク質の免疫組織化学的な検出と並行して、同一個体の反対側の海馬で、RNAシークエンス解析を行った。現在解析を進めている途中ではあるが、小孔形成に関与するタンパク質の遺伝子が発現していることが明らかになった。血液脳関門があるとされている海馬組織中に小孔形成に関わるタンパク質の存在を示唆する報告はこれまでなく、この結果は海馬血管構造について新たな知見を与える可能性がある。また、タイトジャンクションの構成に関わるタンパク質についても、現在解析を進めている途中であるが、RNAシークエンス解析により複数の関連タンパク質の遺伝子の発現が示唆されており、今後その発現変化等を調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大により、いつでも停止できる研究しか行えない時期があったため、試料作製に時間がかかる形態解析に遅れが生じた。しかしRNAシークエンス解析を実施したことで海馬の血管構造に関する新たな知見が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
血中アルブミンが海馬に移行する機序を明らかにするため、海馬毛細血管の形態解析とRNAシークエンス解析を優先的に行う。従来の手法では、走査型電子顕微鏡による内皮細胞の構造観察が困難であることがわかったため、試料作製方法を改良し検討していく。免疫組織学化学的な手法により関連タンパク質を検出することが困難であった場合には、生化学的にその発現量を調べる。また、形態解析と並行して血中アルブミンが海馬ニューロンに及ぼす影響を電気生理学的に調べるための準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染状況の影響により、研究活動が停滞したことで試薬等の消耗が予定していたよりも少なかったことと、参加した学会がオンラインで開催されたため、旅費に当てていた出費がなくなったことが理由である。次年度は進捗状況が遅れているため、引き続き形態解析も並行して行う。生じた次年度使用額は、免疫組織化学的解析のための抗体や、タンパク質の発現量の測定のためのウエスタンブロットに用いる試薬やELISAキットの購入に充てる。
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