研究課題
シングルセル解析により、組織微小環境中の細胞種多様性が明らかとなり、免疫細胞を含め異なる細胞種間相互作用を抽出できる。骨巨細胞腫は先行研究が発表されたため、今回は軟部明細胞肉腫をターゲットとした。明細胞肉腫の原発巣、リンパ節のそれぞれ1検体から組織を採取し、1細胞ごとにdropletに分離し、ライブラリ調整した。Hiseq 2500にてシークエンスし、Cell Ranger 6.0を用いて、細胞ごとの遺伝子発現情報を取得した。R 4.0.2, Seurat 4.0を用い、feature RNA 500以上、ミトコンドリア遺伝子占有率15%以下を基準として、質の低い細胞のデータを除外した。リガンド-受容体解析にはnichenetrを用いた。 原発巣では4631細胞、リンパ節転移部では2322細胞を解析対象とした。2検体を統合し解析を行い 、10個のclusterに分けアノテーションを行ったところ、Tumor、T cell、NK cell、Macrophage/Monocyte、Endothelial cell、Fibroblast、B cellが同定された。腫瘍内免疫環境の解析を行うと、特にリンパ節内のCD4+細胞やCD8+細胞は、BATF+ FOXP3+ CTLA4+ CD4+ T cell (Regulatory T cell, Treg)やLAG3+ PD1+ CD8+ T cell(Exhausted T cell)が多く、免疫抑制的な腫瘍環境を形成していた。T regはTGFβ1やCXCL12によって分化誘導されることが知られており、リガンド-受容体解析においてMacrophageやEndothelial cellのTGFβ1リガンドとT細胞におけるTGFβ1受容体、FibroblastのCXCL12リガンドとT細胞のCXCR4受容体との結合が示唆された。
3: やや遅れている
コロナ感染症の蔓延のため医療機関の連携が難しく、検体収集がやや遅れている
今回の解析から軟部明細胞肉腫の原発巣やリンパ節転移内において腫瘍免疫が抑制されている可能性が示唆された。今後、検体を増やしてこれらの所見が複数検体においても同様に見られるか検討を行う。各検体において1細胞ごとにdropletに分離し、ライブラリ調整を行う。Hiseq 2500にてシークエンスし、Cell Ranger 6.0を用いて、細胞ごとの遺伝子発現情報を取得する。また、複数検体を統合した解析を行う。リガンド-受容体解析などの2次解析を行い、腫瘍内とリンパ節転移内の免疫環境を詳細に解析する。複数の検体において同様の所見が得られた場合には、同定された免疫異常をターゲットとした新規治療の可能性を探索する。新鮮腫瘍組織より樹立されたcell lineや入手可能な公共のcell line、オルガノイドを使用して、免疫細胞との共培養により抗腫瘍効果を評価する。ゼノグラフトモデルに対して抗CTLA4抗体などの免疫療法を行い、抗腫瘍効果の評価を行う。これらから得られた知見をまとめ学会発表や論文作成を行う。
進捗がやや遅れていることもあり、必要以上に経費をかけずに済んだ。次年度の経費のかさむ解析等に使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 8件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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