研究課題
半月板損傷に伴う切除後欠損に対し、欧米では凍結融解同種半月板移植が行われるが、抗原性残存や感染リスクの課題が残る。我々はこれらの課題の解決手段として、世界で初めて高静水圧印加処理を用いた脱細胞化半月板を作製し、昨年の本学会で脱細胞化半月板の組織学的、生化学的観点からの凍結融解処理後半月板との比較検証結果について報告した。その次段階として、脱細胞化および凍結融解処理半月板の生体力学的評価および生体適合性の検証を目的とした。新鮮ブタ膝内側半月板を用いた。脱細胞群は30度、1000MPaで高圧処理を10分間施行後、DNase含有溶液で3日間の核酸除去処理を37度で施行した。凍結融解群は半月板を-80度で2日間冷凍後、37度で温浴し融解した。未処理半月板を対照群とした。生体力学的には内側半月板中節から径8mmの円柱を作製し、生理的荷重として10%ひずみおよび過負荷として20%ひずみの圧縮応力および20%ひずみでの50回繰り返し圧縮後の20%ひずみの圧縮応力を測定した(N=6)。生体適合性についてはブタの背部皮下に脱細胞化半月板および凍結融解半月板を移植し、移植後3、14、28日で組織を採取し組織学的検証を行った(N=5)。脱細胞群の10%ひずみでの圧縮応力は3群間で差を認めなかったが、20%ひずみの圧縮応力および20%ひずみ繰り返し圧縮後の圧縮応力は脱細胞群で未処理群、凍結融解群と比較し有意に低下した(P<0.05)。半月板移植後の炎症細胞数に関して、脱細胞群は凍結融解群より少なかった。生体力学的検証の結果は、生理的負荷を示唆する10%ひずみでの圧縮応力に関しては3群で差を認めなかった。過負荷を示唆する20%ひずみでの圧縮応力に関して脱細胞群は凍結融解群とは比較し劣ったが、免疫学的には優れていた。高静水圧印加処理を用いた脱細胞化半月板は、移植後の免疫拒絶のリスク低減という観点から凍結融解同種半月板移植に代わる可能性を有する。
3: やや遅れている
他の研究、臨床活動にエフォートを割かれているため
脱細胞化半月板および凍結融解半月板をラットの膝関節内に移植する。移植後半月板に関して、生体適合性およびその関節軟骨温存能を評価する。生体適合性に関してはHE染色および免疫染色を行って評価し、関節軟骨温存能については、ラットの膝関節部にsafranin-o染色を行って、safranin-o染色陽性領域の面積を測定することにより評価する。
当初予定していた実験が行えていないため
すべて 2023 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件)
Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research
巻: 109 ページ: 103147~103147
10.1016/j.otsr.2021.103147
European Journal of Orthopaedic Surgery & Traumatology
巻: 32 ページ: 497~503
10.1007/s00590-021-03001-4