研究実績の概要 |
低分子ロイシンリッチプロテオグリカン(small leucine-rich proteoglycans, SLRPs)はコラーゲン線維の修復やリモデリングに重要な役割を果たしており、軟骨細胞や半月板の恒常性維持に関与する。また内側半月板後根断裂(medial meniscus posterior root tear, MMPRT)は内側半月板(medial meniscus, MM)の機能不全を引き起こし、膝関節の退行性変化を急速に悪化させる。本研究では、MMPRTによるMM後角部でのSLRPsの発現について検討した。骨軟部腫瘍もしくはMMPRTで人工膝関節置換術を施行し、本研究に同意を得た患者からMMを採取し、それぞれcontrol群(n=5)、MMPRT群(n=5)とした。組織学的評価としてMM後角部をsafranin Oで染色した。Image Jを用いて赤色輝度値(R/B value)を算出し、赤染性を評価した。またMM後角細胞を分離培養し、リアルタイムPCRによりDecorin, Biglycan, Fibromodulin, Lumican, KeratocanなどのSLPRsおよびSLRPsの発現に関与すると考えられるTGF-β1のmRNA発現量を2群間で比較した。MM後角部におけるR/B valueはMMPRT群で有意に高値であった(control群: 0.7, MMPRT群: 19.1)。培養半月板細胞の遺伝子発現においては全てのSLRPsにおいてMMPRT群で発現が高く,Fibromodulin (4.1倍), Lumican (4.4倍), TGF-β1(3.2倍)で有意に高値であった。MMPRT受傷後のMM後角部半月板細胞ではSLRPsの発現が増加していることが明らかとなった。
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